乗車券類の様式

乗車券の収集から出発して、規則鉄になったという人が多い。「国鉄乗車券類大事典」の著者である近藤喜代太郎北大名誉教授などは、その代表だろう。
ところが、JR旅客5社*1がウェブに掲載している旅規は、JR東海を除き乗車券類の様式が省略されている。短距離区間の乗車券が自動券売機発券の金額式に、中長距離券がマルス発券になっているのに、第189条の常備片道乗車券に記載されているのは、一般式、矢印式、地図式、相互式、金額式乗車券の各様式である。JR発足後も1958(昭和33)年の制定の旅規を引き継いでいる現行旅規には有名無実化した規定が多いが、「乗車券類の様式」はもっとも実態と乖離している条項である。
乗車券は運送契約に基づく運送請求権を表章する有価証券とされており、伝統的に約款においてその様式が明示されていた。偽造防止などの意味があったのだろう。1921(大正10)年制定された国鉄の最初の旅規は、第一編「総則」に続く第二編「旅客ニ関スル規定」の冒頭に「乗車券ノ種類及取扱方」として乗車券の様式が記載されていた*2
旅規ポータルに旅客及び荷物運送規則(1958)を掲載しているが、これまで「様式省略」で片付けていた。乗車券類収集家の読者にとっては、物足りなかったかもしれない。本日の更新で、学割証などを含む旅客編のすべての様式類の図を掲載した。画質が悪いのはご容赦願いたい。
ところで、現行旅規にはマルス発行乗車券の様式がまったく記載されていない。どういう取扱いなのだろうか。
訂正(11月15日):第二編「旅客ニ関スル規定」の冒頭に乗車券の様式が記載されていたのは、1921(大正10)年制定の「旅客及荷物運送規則」ではなく、内規の「旅客及荷物運送取扱細則」でした。

*1:JR四国は、自前でないICOCAの約款をウェブに掲載しているのに、旅規を掲載していない

*2:1958年の大改正まで、旅規は乗車券、急行券、寝台券など券種ごとに発売条件、運賃・料金を記載していた