気仙沼線代行バス

先日気仙沼線代行バスに乗車した。最知・陸前階上間はBRTの先行開業だが、単線の軌道敷を走行するスピードは、国道走行時と変わらず、Rapid Transitというのは誇大広告。一般道路の信号がない代わりに、所々に退避場が設置され、すれ違いの待ち合わせをする。軌道の被災状況を見ると、JR東日本が言っている60%を専用道にするのは、かなり時間がかかりそう。それに残っているレールを取り外して、舗装するというのは、なんとももったいない。
以前、JR北海道柿沼副社長(現会長)の講演を聞いたことがある。JR北海道のほとんどの路線は赤字だが、簡単に廃止できない。鉄道を低コストで運営できないかと考えたのが、DMVである。バスのコストは、ディーゼルカーの10分の1。DMV化した路線には一般の車両は走らせないので、GPSの利用等により信号系を簡素化し、さらにコスト削減できる(そのためには規制緩和が必要)、という説明だった。
質疑応答の時間に「DMVの専用路線にするなら、レールを残してDMVにしなくても、軌道敷に普通のバスを運行したほうがコストを削減できるだろう。バス運賃を鉄道なみに維持すれば地元も理解するのでは」と意地悪な質問をしたところ、次のような答えだった。

  • DMVは、レールというガイドがあるため、狭い軌道敷で高速運行ができる。バスをDMVなみの速度で走らせるためには、軌道敷の道路幅ではたりない。
  • 鉄道の鉄橋を自動車専用道路橋に付け替えるのは多額の費用がかかる。

柿沼氏は、鉄道の省スペース性を強調されていた。実際、気仙沼・柳津間の代行バスの所要時間は2時間強で、震災前の鉄道の1時間20分程度の1.7倍。専用道路化しても、一般道路並みのスピードしか出せないから、これが大きく短縮されることはない。津波で線路が流された山田線、大船渡線気仙沼線の復旧は、DMV実用化のチャンスではと思うのだが、DMVの話はまったく聞こえてこない。
2011年5月の石勝線の特急脱線炎上事故対応のため、JR北海道DMV実用化は延期になっているようだ。北海道新幹線開業時に、JRから経営分離される江差線木古内以遠を廃止するという話が出てきたのもそのためか。こういう路線を廃止せずに維持するためのDMVだったはず。自社の路線をDMVで救えないのなら、気仙沼線等の救済は無理だろう。
なお、8月21日の記事で、気仙沼線の不通区間について、

19日まで「定期乗車券及び普通回数乗車券に限り、ミヤコーバスによる振替輸送」をしていたということは、不通区間の定期券と回数券は事故後も発行し続けていたのだろうか。

と書いた。大船渡線気仙沼・盛間は現在も同様な振替輸送を行っているので、気仙沼駅で尋ねてみた。その答えは、「定期券と回数券は発売しています」とのことだった。本来は「事故発生前に購入した乗車券類」に適用する振替輸送について、旅客に有利な対応がとられていることになる。