続・旅規第250条

大阪・三河三谷間を運賃分割プログラムで検索すると、西大路、岐阜、名古屋、岡崎の5分割により、4,310円が3,800円となる。これですら、運賃の公平さという観点から問題だと思うが、さらに230円安い3,570円になる69条特定区間区間変更という抜け道を放置しているのは、やはり納得できない。

69条特定区間は、特定区間通過する乗車券について、短い経路により運賃計算し、非運賃計算経路の迂回乗車を認めるものである。特定区間外への分岐駅を変更開始駅とする区間変更の取扱いは、特定区間の一部しか乗車しない旅客の乗車区間に対し、運賃計算経路の低廉運賃を適用していることになる。これは、274条の旅客が任意で旅行中止する場合の払いもどし(既払運賃から既乗車区間の運賃の差額を払い戻し、手数料を徴収する)とも整合性が取れていない。

区間変更を利用する抜け道は、69条特定区間の迂回経路上に分岐駅がある場合生じ、その運賃差額は、運賃計算経路と迂回経路の距離の差が大きいほど大きくなる。現行の8特定区間のうち迂回経路から分岐する路線があるのは、赤羽・大宮間(0.9キロ差)、品川・鶴見間(2.9キロ)、山科・近江塩津間(19.5キロ)、大阪・天王寺間(0.3キロ)である*1。山科・近江塩津間の19.5キロが最大であり、問題となっている例のほか同様な区間が多数存在する。その他の特定区間は、距離の差がわずかであり、運賃キロ地帯区分の境界に例があるかもしれないが、その差額は乗車券分割に比べて、大きくないだろう。

過去存在した特定区間では、1994年3月に廃止された肥前山口諫早間(○長崎本線経由、佐世保線大村線経由)の差が26.7キロ(地方交通線の換算キロでは31.5キロ)で、最大だった。1988年4月の松浦鉄道への転換まで、迂回経路の有田と早岐で分岐し、旧松浦線の駅に区間変更できた。例えば、長崎・中原間(116.8キロ、1,800円*2)の乗車券で、早岐・中原間(71.0キロ、1,220円)を早岐・調川間(75.3キロ=換算キロ)に変更すると変更区間の運賃差額はなく、あらかじめ長崎・調川間(152.6キロ、2,400円)の乗車券を購入するより、600円、実に25%の割引きとなった。

識者によれば、特定区間外への分岐駅を変更区間の開始駅とする取扱いは、旅客が経路を選択できない乗車券の区間変更において、旅客に不利にならないようににするためであるという。特定区間が分岐する駅を変更開始駅とすると旅客に不利になる例として、大阪市内・大宮間の乗車券で、武蔵浦和から新座まで区間変更するときの運賃差額が示された。













開始駅
原券区間(大宮) 変更区間(新座) 差額
赤羽
290円(17.1キロ) 380円(20.7キロ) 90円
武蔵浦和
160円(7.4キロ) 210円(10.1キロ) 50円
運賃計算経路と迂回経路のキロ差が小さい特定区間で、運賃キロ地帯区分の境界に発生した事例である。この区間は2004年3月の旅規改定で、70条特定区間から69条に移行したものである*3


1958年10月の旅規全面改定で250条(当時は252条)が登場したときに、このような例が存在しただろうか。当時の69条特定区間のうち、迂回経路に分岐駅がある区間の運賃計算経路とのキロ差は最小でも、14.7キロ(日暮里・岩沼間)あった。また当時は、運賃キロ地帯制を採用せず、10円刻みであった。旅客にとって不利になる例があったとは考えにくい。たとえあったとしても、旅客が得をするケースのほうが圧倒的に多かったはずである。また、区間変更のような特殊な取扱いまで、旅客の利益を保護する必要があるかという疑問もある。


やはり、69条特定区間の迂回経路の区間変更の運賃計算方法は、早急に見直すべきだろう。最も簡単な方法は、すべての区間変更を発駅からの運賃差額計算に変更することだろう。

*1:東京・蘇我間の京葉線営業キロは、運賃計算経路の総武線と等しく、京葉線から分岐する路線は総武線のみに接続するだけなので該当しない

*2:以下運賃は1988年3月現在

*3:70条当時は、特定区間の入口駅鶴見からの比較で、鶴見・大宮間、鶴見・新座間ともに、950円で収受額はなかった