岡谷・辰野・塩尻三角線の選択乗車

ブログ「制度系」のみどり湖経由は、3月13日の旅規改定で廃止された選択乗車区間「小野又は辰野以遠(宮木方面)の各駅と岡谷以遠(下諏訪方面)の各駅との相互間(川岸経由、塩尻経由)」についての記事である。旅規ポータルの国鉄旅規改訂履歴を参照し、1983年7月5日のみどり湖経由の新線開業により設定されたこの選択乗車区間は、当初

辰野以遠(宮木方面)の各駅と、岡谷以遠(下諏訪方面)の各駅との相互間(川岸経由、塩尻経由)

だったが、1985年3月の旅規改定時に「小野又は」が追加されたことを紹介*1し、

小野駅が突然に選択乗車の対象となった理由、信濃川島駅が最後まで選択乗車に含まれなかった理由の2点が不思議(後略)

と書いている。
1985年当時と現在の岡谷・辰野・塩尻を頂点とする三角線の各方向別の列車本数(下りの定期列車。カッコ内は優等列車の内数)を調べてみた。

飯田線と岡谷以遠の選択乗車が設定されたのは、当時飯田線から中央本線への直通列車が、岡谷方面への18本に加え、塩尻方面にも3本あったためだろう。85年に小野発着を追加したのは、小野から塩尻への普通列車は10本あったが、岡谷方面への直通普通列車が1本しかなかったため、塩尻・みどり湖経由の選択乗車を認める必要があったものと思われる(岡谷−辰野−小野間17.8キロ、岡谷−塩尻−小野間20.6キロ)。この場合、信濃川島は辰野と小野の中間にあるのだから、同駅発着も当然認めるべきであり、「小野若しくは信濃川島又は辰野以遠」とするのを書き忘れ、そのままずっと放置されていたのだろうか。
飯田線から塩尻方面への直通列車が全廃され、この選択乗車が廃止されたのはやむをえない。しかし、小野が巻き添えを食って、岡谷間まで列車本数の多いみどり湖経由で乗車すると、従来は320円でよかったのが、400円必要になった。
みどり湖経由新線開業時に設定された選択乗車区間は、もう一つ

辰野以遠(宮木方面)の各駅と、塩尻以遠(洗馬又は広丘方面)の各駅との相互間(信濃川島経由、岡谷経由)

があり、こちらは現在も残っている。飯田線方面から松本方面への直通列車(快速「みすず」)が岡谷経由になったので、乗客にとってますます利用価値が出てきた。
この区間も1985年3月の改定までは、

川岸又は辰野以遠(宮木方面)の各駅と、塩尻以遠(洗馬又は広丘方面)の各駅との相互間(信濃川島経由、岡谷経由)

だった。しかし川岸から塩尻方面に乗車するときは、列車本数の多い岡谷経由のほうが距離が短く、運賃が安い。そのため、わざわざ長距離で時間が掛かる辰野経由で乗車する旅客がいなかったのだろう。「辰野以遠(宮木方面)の各駅と、みどり湖駅との相互間(塩尻経由、岡谷経由)」の選択乗車が設定されなかったのも、列車本数の多い岡谷経由のほうが距離が短いためだろう。

*1:この変遷は「デスクトップ鉄のデータルーム」のJR旅客制度特例の変遷でも紹介している。