JR九州のSUGOCA規則はSuicaとICOCAの折衷版

3月1日からJR九州ICカード乗車券「SUGOCA」の取扱いが開始となった。これで、JR四国を除く旅客会社5社のICカード乗車券が出揃った。JR九州のサイトにICカード乗車券取扱規則が掲載された。
JR各社のICカード乗車券取扱ルールには、SuicaICOCAの二つの体系がある。名称もJR東日本は「ICカード乗車券取扱規則」、JR西日本は「ICカード乗車券取扱約款」と異なる。JR東海TOICAICOCA約款に、JR北海道KitacaSuica規則にならっている。JR九州の規則は、SuicaICOCAの折衷版である。
SuicaICOCAの最大の相違点は、ICカード乗車券の種類である。Suicaには、無記名と記名のICカード乗車券があり、記名には小児用SuicaSuica定期券を含む。これに対し、単にICOCAというと無記名のIC乗車券であり、記名式は小児用ICOCAICOCA定期券に限られる*1
規則(約款)の構成も大きく異なる。Suicaが乗車券と定期券とを分けずに、旅規と同様に、発売、運賃の減算、効力、変更・払いもどし、特殊取扱いと、取扱項目別に章を立てているのに対し、ICOCAは無記名のICOCAICOCA定期券とで章を分け、それぞれの章で各取扱項目を規定している。1958年全面改定以前の旅規のスタイルである。なお、2001年11月Suicaが登場したときは、無記名のSuicaイオカードSuica定期乗車券の二本立てで、規則もICOCAと同様、それぞれで章を分けていた。2007年3月の全面改定で現行スタイルになった。
SUGOCAには、SUGOCA乗車券とSUGOCA定期券があり、SUGOCA乗車券にはSuicaと同様、記名と無記名とがある。約款はICOCAと同様、SUGOCA乗車券とSUGOCA定期券とに章を分け、章ごとに発売、運賃、効力、変更・払いもどし、再発行・交換、特殊取扱いの各節がある。Suicaの約款では別立てにしていない記名乗車券と定期券を別個に規定していることもあって、条文の数が多い。ICカード乗車券の相互利用の規定がないのに全51条とICOCAの44条より多く、PASMOとの相互乗り入れに多くの条を費やしているSuicaの55条に迫っている(下表参照)。

Suica ICOCA SuGOCA

第1編 総則(1-18)
第2編 旅客事業
第1章 通則(19-24)
第2章 発売(25-26)
第3章 運賃の減算(27-28)
第4章 効力(29-34)
第5章 変更・払いもどし(35-37)
第6章 特殊取扱い(38-46)
第3編 ICカード乗車券の相互利用
第1章 通則(47-50)
第2章 複数の鉄道会社線を乗継ぐ場合の旅客の取扱い(51-54)

第1章 総則(1-17.2)
第2章 ICOCA(18-28)
第3章 ICOCA定期券(29-40)
第4章 ICカード乗車券の相互利用等(41-44)

第1編 総則(1-15)
第2編 旅客事業
第1章 通則(16-20)
第2章 SUGOCA乗車券
第1節 発売(21-23)
第2節 運賃(24)
第3節 効力(25-28)
第4節 変更・払いもどし(29-31)
第5節 再発行・交換(32-34)
第6節 特殊取扱い(35-37)
第3章 SUGOCA定期券
第1節 発売(38-39)
第2節 運賃(40)
第3節 効力(41-43)
第4節 払いもどし(44-45)
第5節 再発行・交換(46-48)
第6節 特殊取扱い(49-51)
構成の差が現れているのは、契約の成立時期に関する条文である。
ICOCAでは、総則の第4条で、

(契約の成立時期及び適用規定)
第4条 ICOCA乗車券による契約の成立時期は、ICOCA乗車券を購入したときとします。
2 個別の運送契約の成立時期は、駅において乗車の際に自動改札機による改札を受けたときとします(ICOCA定期券における定期乗車券部分を除きます。)。また、第8条第2項の規定により乗車券等との引換えに使用する場合には、乗車券等その契約に関する証票の交付を受けたときとします。ただし、その成立について別段の意思表示があつた場合を除きます。
3 前各項の規定によつて契約の成立した時以後における取扱いは、別段の定めをしない限り、すべてその契約の成立した時の定めによるものとします。この場合、第8条第2項の規定により引き換えられた乗車券等に係る取扱いは、旅客規則の定めによるものとします。

と規定しているが、Suicaの第1編総則第4条は、

(契約の成立時期)
第4条 本規則に基づくICカード乗車券に係る契約の成立時期は、当社が ICカード乗車券を交付したときとします。

だけで、個別の運送契約については、

(運送契約の成立時期)
第19条 個別の運送契約の成立時期は、旅客が駅において乗車の際に自動改札機による改札を受けたときとします。
2 前項の定めにかかわらず、Suica定期乗車券又は Suica特別車両券による個別の運送契約の成立時期は、Suica定期乗車券又は Suica特別車両券を購入したときとします。

と第2編第1章の通則で規定している*2。これは、SUGOCAも同様であるが、Suicaの規則にはない、ICOCAの第4条第3項と同様の規定を追加している。
このほか、JR九州の規則には、SuicaにはなくICOCAにある、無記名ICカード乗車券の発売額(デポジット 500円を含み、2,000円)が存在するが、記念ICカード乗車券発売の規定はない。まさに折衷版である。

*1:他に、オートチャージ機能を付与したクレジットカード一体のSmart ICOCAがあるが、この取扱ルールは別に定められている。

*2:2001年時点では、ICOCAと同様第4条にすべて規定していた。