5月27日旅規大改定

JR各社の旅規が5月27日現在になっていた。JR東日本改正履歴によると、旅客営業取扱基準規程で特定していた運賃・料金を旅規本文に規定した大改定である。

このブログで、約款の契約条件のもっとも重要な対価の規定を非公開の内部規定に置くのは問題であると何度も主張してきた。民法548条の2(定型約款の合意)で約款の要件として「定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示」することを規定し、これに基づき鉄道事業法18条の2が「『表示シテイタ』トアルハ『表示シ、又ハ公表シテイタ』と規定した(2020年4月4日の記事追記2参照)ことによって、JRも方針を改めたものと思われる。

まだ詳細に見おわっていないが、以下の規定が基準規程*1から旅規に移行した。

旅規 内容 基準規程
57条の3 特定の特別急行料金 97条の2
57条の4 特定の普通急行料金 97条の4
70条の2 列車特定区間 110条
74条の6 補助寝台を使用する場合の急行料金 112条
79条 東京附近等の特定運賃 113条の2
80条 新幹線並行区間等の特定運賃 113条の3
95条の2 東京附近等特定区間の定期旅客運賃の特定 117条
125条 急行料金 129条の2
136条 寝台個室の名称及び設備定員 134条

79条の特定普通運賃と95条の2の特定定期運賃の表は、それぞれ別表2号のイの6と別表2号のレ及びレの2に基準規程別表から移行し、規定された。また、59条、59条の2に定められていた特定の特別車両券(A)、(B)の発売は削除され130条で規定された。運賃・料金の特例である70条の2の列車特定区間は旅規に規定されたが、効力規定の特定分岐区間、分岐駅通過列車、特定列車による折返し区間外乗車等は、基準規程に残された。

旅規ポータル及びデータルーム本館の関連ページの更新作業はこれからである。

*1:2011年当時の基準規程に規定されていた条項

第13回全国のJR駅五番勝負(開催予告)

第13回全国のJR駅五番勝負は、6月4日(金)21時から次のスケジュールで開催します。

  • 6月4日(金)21時:出題
  • 6月5日(土)21時:第1回採点、第1ヒント提示
  • 6月6日(日)21時:第2回採点、第2ヒント提示
  • 6月7日(月)12時30分:第3回採点、アナグラムヒントの解凍文(及び第3ヒント)を提示
  • 6月8日(月)21時:終了

全国のJR駅五番勝負は、問題に提示する駅と共通する特徴(共通項)がある駅を一つずつ答えてゆくクイズです。解答者は、問題駅(及び先行の正答駅)から共通項を推定し、該当する駅を探して答えます(クイズのページにある全国のJR駅リストを参考にしてください)。先行の正答とヒントとによって、共通項が次第に明確になってゆき、同じ問題を何人もが解答できます。

ヒントは、アナグラムヒント及び非JRの該当駅を2回に分けて提示します。第2ヒントとアナグラムヒントの解凍文によって、だれもが共通項にたどり着けるように出題するつもりです。さらに解答状況によっては、解答者全員が完答できるよう、ダメ押しの第3ヒントを提示することがあります。

上級者はメダルや完答一番乗りを目指して、初心者は完答を目指して、だれもが楽しむことができます。過去問等は、クイズのホームページにあります。五番勝負開催期間中のアクセス数はふだんの3-6倍になります。解答者だけでなく、多くの方がご覧になっているようです。これまで見送られていた方も、ぜひご参加ください。

なお、開催期日の約2週間前の予告になりますので、忘れてしまう方がおられるかもしれません。そこでメールでアドレスを登録していただければ、開催の前日にbccで連絡メールをお送りします。

 

鉄道会社の2020年度決算

日経の5月15日の記事。

鉄道大手21社、赤字1.5兆円 前期最終、移動自粛打撃に
JRや私鉄など主要鉄道大手21社の2021年3月期の連結決算が14日に出そろった。全社が最終赤字となり合計赤字額は1兆5000億円を超えた。(後略)

ウェブに決算短信を掲載しているJR4社と大手私鉄(非上場の東京地下鉄を含む)の19社について、各社の運輸事業の業績を比較してみた。日経の記事には、JR北海道JR四国も含まれているが、20年度の決算短信はウェブに未掲載である。運輸業売上高は各社のセグメント情報の運輸事業、都市交通事業など鉄道、バスを含む。西鉄はバス事業が大半と思われる。名鉄には運送業というセグメントがあるが、これは含めていない。利益率と比較するため、社内売上げを含む売上高とした。上段が2019年度、下段が2020年度の数字である(単位:百万円)。

会社 売上高 営業利益 純利益 運輸売上 構成比 増減率 部門利益 利益率
JR東日本 2,946,639 380,841 198,428 2,081,136 70.6%   250,575 12.0%
1,764,584 -520,358 -577,900 1,167,718 66.2% -43.9% -532,369 -45.6%
JR東海 1,844,647 656,163 397,881 1,431,266 77.6%   617,643 43.2%
823,517 -184,751 -201,554 533,006 64.7% -62.8% -183,328 -34.4%
JR西日本 1,508,201 160,628 89,380 949,811 63.0%   105,313 11.1%
898,172 -245,544 -233,214 489,609 54.5% -48.5% -252,168 -51.5%
JR九州 432,644 49,406 31,495 173,730 40.2%   19,848 11.4%
293,914 -22,873 -18,984 95,294 32.4% -45.1% -37,629 -39.5%
東武鉄道 653,874 62,653 35,530 215,427 32.9%   37,659 17.5%
496,326 -13,577 -24,965 159,122 32.1% -26.1% -5,224 -3.3%
西武ホールディングス 554,590 56,823 4,670 168,563 30.4%   22,829 13.5%
337,061 -51,587 -72,301 122,597 36.4% -27.3% -9,817 -8.0%
京成電鉄 274,796 28,320 30,110 161,089 58.6%   17,921 11.1%
207,761 -18,056 -30,289 104,642 50.4% -35.0% -25,677 -24.5%
京王電鉄 433,669 36,024 17,875 129,659 29.9%   13,345 10.3%
315,439 -20,866 -27,519 88,451 28.0% -31.8% -16,413 -18.6%
小田急電鉄 534,132 41,103 19,923 173,174 32.4%   21,641 12.5%
385,978 -24,190 -39,804 116,230 30.1% -32.9% -25,937 -22.3%
東急 1,164,243 68,760 42,386 213,647 18.4%   27,018 12.6%
935,927 -31,658 -56,229 151,972 16.2% -28.9% -26,014 -17.1%
京浜急行電鉄 312,751 29,489 15,650 121,024 38.7%   12,875 10.6%
234,964 -18,420 -27,211 78,553 33.4% -35.1% -21,434 -27.3%
相鉄ホールディングス 265,100 26,423 14,631 39,794 15.0%   5,844 14.7%
221,136 -3,148 -13,057 30,354 13.7% -23.7% -3,899 -12.8%
名古屋鉄道 622,916 47,363 28,879 163,544 26.3%   21,577 13.2%
481,645 -16,354 -28,769 104,995 21.8% -35.8% -17,866 -17.0%
近鉄グループホールディングス 1,194,244 49,380 20,561 221,711 18.6%   27,686 12.5%
697,203 -62,115 -60,187 150,218 21.5% -32.2% -24,670 -16.4%
南海電気鉄道 228,015 35,223 20,811 100,980 44.3%   12,953 12.8%
190,813 5,552 -1,861 66,566 34.9% -34.1% -13,599 -20.4%
京阪ホールディングス 317,103 31,123 20,121 93,365 29.4%   10,862 11.6%
253,419 -1,265 -4,574 65,694 25.9% -29.6% -9,658 -14.7%
阪急阪神ホールディングス 762,650 95,170 54,859 227,176 29.8%   40,056 17.6%
568,900 2,066 -36,702 156,926 27.6% -30.9% -5,108 -3.3%
西日本鉄道 389,446 16,411 6,678 86,676 22.3%   4,511 5.2%
346,121 -9,501 -12,074 59,812 17.3% -31.0% -11,838 -19.8%
東京地下鉄 433,147 83,917 51,391 383,889 88.6%   70,999 18.5%
295,729 -40,299 -52,927 255,784 86.5% -33.4% -50,791 -19.9%

全19社が赤字転落といっても、会社間で差がある。南海は全社の営業利益がプラスで、最終赤字額も19社のなかで最小の19億円にとどまった。運輸業のマイナスを、不動産、流通、レジャーなどがカバーした。西武と近鉄以外の17社が運輸事業の構成比率を低下させたことは、他のセグメントより運輸事業の減収率が大きかったことを意味する。西武と近鉄は、ホテル・レジャー事業が大幅に減収(西武:-60%、近鉄:-63%)となった影響で、運輸事業の構成比が高まった。なお、近鉄保有する24ホテルのうち8ホテルを米国の投資ファンドに売却すると発表した。

運輸業セグメントの減収が最大だったのは、JR東海で63%も下落した。新幹線を有するJR3社の下落率はのきなみ40%台と高い。空港路線を有する京成、京急名鉄、南海は、空港利用客の減少の影響もあったためか、30%台の下落。

一方、通勤輸送が主体の相鉄は、24%の下落にとどまり、東武、西武、東急、京阪も20%台。東京メトロは、テレワークの影響を受けたのか30%を超えた。東武運輸事業部門利益率が-3.3%にとどまり、西武も-8%と健闘しているが、他社との差異はよくわからない。

追記(5月19日):コメントがあった相鉄新横浜線の運賃収入のデータがないか探してみた。直接のデータはなかったが、決算説明資料の4ページに、輸送人員・運輸収入の対前年同月比の推移データがあった。これによると、2019年11月30日新横浜線開業した翌月の12月は、輸送人員1.0%増、運賃収入1.6%増、2020年1月はどちらも3.2%増、2月はそれぞれ1.3%増、0.1%増(3月以降はコロナの影響でマイナス)と大きくない。新線は増収にあまり貢献していないと思われる。

これは実感に合う。営業キロが2.1キロしかなく、2019年2月28日の記事に書いたように運賃が高く、列車本数が毎時2本と少ない。本命の相鉄・東急直通線が2022年度に開業するまで、新線に移行する旅客は多くないだろう。

 

SL人吉の座席指定料金

JR東日本旅規改訂履歴(条項順条項順)を更新した。運休中の肥薩線に代わり、5月1日から熊本・鳥栖間に運転されるSL人吉の座席指定料金改定に伴うもの。139条の3(座席指定料金の特定)4号のJR九州の特定料金が840円から一挙に1,680円と2倍になった。もちろん、各社の特定料金のなかで最高額である。

139条の3の特定座席指定料金は1969年5月10日のモノクラス制移行時に、通常料金の300円に対し期間を限定して100円に特定したものである(1987年4月1日の民営化時には、500円と300円)。2004年3月以降、JR北海道JR九州を皮切りに、各社の「別に定める列車」に通常料金より高額の特定料金が導入されるようになった。昨年12月1日JR西日本の「Aシート」の座席指定料金が840円となり、「別に定める列車」の特定料金はJR四国を除きすべて通常料金よりも高額になった。閑散期の特定料金として始まった制度がSL牽引列車の指定席等に適用され、条文の趣旨が変わった。当初の趣旨は第5号の「前各号以外で、第57条の3第1項第1号の規定により発売する場合は、別に定める場合を除き330円とする」に残るだけとなった。

無料入場券

JR東日本は、入場料金を実質無料にする「タッチでエキナカ 入場券ポイントバック!キャンペーン」を期間限定で開始した(4月20日付プレスリリース)。JRE POINTに登録したSuicaで東京、品川、大宮の各駅に入場し、エキナカでの1,000円以上の買い物をSuica決済し、2時間以内に出場するとSuica入場サービスで減額する入場料金相当額の140ポイントを付与するというもの。

JR東日本ICカード乗車券取扱規則の3月改定で、57条の2(Suica入場サービス)が新設されたことに伴うもの。ICカード乗車券を入場券として使用する初めての制度で、JR東日本は、タッチでエキナカと案内している。

ところで入場料金が無料となる制度は、国鉄時代にもあった。新婚旅行客を対象とした全区間1等(モノクラス制移行後は、グリーン車)のことぶき周遊乗車券に、見送り客用の10枚の入場券が無償で交付された。近藤喜代太郎・池田和正「国鉄乗車券類大事典」(JTB、2004)に次のように解説されている。

「ことぶき入場券」とは、昭和42年(1967)2月、新婚旅行に専用された「ことぶき周遊券」の購入者に国鉄からの祝いとして10枚進呈されたものである。「入場券」というが、無賃で特定者(その新婚旅行者の見送り人)を入場させたので本券は入場証だった。しかし10枚以上は有料となったので、本件は入場証でもあり、入場券でもあった。(p449)

入場証とは、旅客営業取扱基準規程389条に無料入場者の範囲として規定されているものである。国鉄末期の1985年7月10日現行の389条は、次のとおりである。なお、2011年当時の規程は、第3号が削除され、第5号の鉄道管理局長が支社長に変更されている*1

(無料入場者の範囲)
第389条 次の各号の1に該当するものには、無料で入場させることができる。
(1) 天皇、皇后、皇太子、皇太子妃又は皇太后ご旅行の際の送迎者
(2) 職務執行中の警察官及び警察吏員
(3) 周遊割引乗車券発売基準規程第43条第1項に定めることぶき入場券所持者
(4) その駅で乗降できる鉄道乗車証所持者。ただし、新幹線停車駅であつて、新幹線用の改札が設けられている場合の当該改札から入場する場合を除く。
(5)前各号に定めるものの他、鉄道管理局長が特に指定した者

 当時の周遊割引乗車券発売基準規程第43条の2(第43条第1項は間違い?)は、次の規定である。

(ことぶき入場券の特殊発売等)
第43条の2 旅客が、新婚旅客に対してセットした周遊割引乗車券を購入して旅行する場合は、入場券に記念事項を表示した券片を附加したもの(以下、「ことぶき入場券」という。)を新婚旅客1組につき10枚を無料で交付する。この場合、入場駅名は記入式とし、旅客の希望によって記入するものとする。
2 前項に規定することぶき入場券を10枚をこえて旅客が希望する場合は、10枚を超えるものについて、所定により発行するものとする。
3 (部内規程のため省略)
(注)無料で交付することぶき入場券については、料金額を表示しない。

なお、この条文はモノクラス制移行時の1969年5月10日の周遊割引乗車券発売基準規程には見当たらず、その後規定されたものと思われる。また同時点の旅客営業取扱基準規程389条も次の3号が規定されているだけである。

(1)天皇、皇后、皇太子、皇太子妃又は皇太后*2旅行の際の送迎者
(2)職務執行中の警察官及び警察吏員
(3)その駅で乗降できる鉄道乗車証所持者

Googleでことぶき入場券を検索すると、はてなブログのページがヒットした。以前コメントをいただいた旅師エストッペルさんのページである。入場日が昭和42年3月5日のことぶき入場券の画像が掲載されている。無料交付制度が開始された直後に発行されたもののようだ。

*1:現行規定は不明だが、第1号に上皇上皇后皇嗣皇嗣妃が追加されているのだろうか

*2:85年当時はひらがなに変わっている

日高本線鵡川・様似間廃止

明日4月1日の日高本線鵡川・様似間廃止に関連して、データルーム本館とクイズの次ページを更新した。

今回廃止された区間には24駅があったが、日高町新冠町、浦河町、様似町、新ひだか町から鉄道駅がなくなった。町村代表駅とともに、市名と駅名の関係(市代表駅)を更新し、推移表に3月31日に時点の集計を記載した。

24駅には日高門別、日高東別、日高三石、日高幌別の4国名駅が含まれており、廃止により現存国名駅は591駅となった。北見、根室に続き日高からも国名駅が消えた。JR北海道の国名駅は8駅となり、9駅の小湊鉄道に抜かれ、名古屋鉄道とともに8位タイとなった。

3月13日付の駅の開業、廃止及び改称と併せて、クイズのページのJR駅名リストと鉄軌道路線リストを更新した。路線リストは、運休区間をアップデートした。水郡線等が復旧した一方、3月2日発生した土砂崩れでえちぜん鉄道勝山永平寺線山王・勝山間がバス代行になっている。 

また分水界を越える鉄道をひさびさに更新、2015年12月以降の路線の廃止、移管、駅の開業、廃止、改称を反映した。

 

 
 

旅規リンク集等更新

旅規ポータルの旅規リンク集を更新した。新たに掲載した鉄道事業者がはなかった。名鉄阪神は、いまだに約款をウェブ公開していない*12020年4月4日の記事の追記2に記載した、民法548条の2(定型約款の合意)への対応は問題ないのだろうか。

pdf版の旅規を掲載している事業者は、改定にあたってホルダーやファイル名を変更することが多く、デッドリンクの解消や、最新版リンク先の変更に時間を費やした*2。これは、同時に更新したJR六社旅規目次大手私鉄旅規目次及び第3セクター旅規目次の条文リンクも同じ*3。3月13日の改定で、140条の3(ホームライナー料金)が削除されたが、本州3社とJR九州は完全削除、JR北海道は条番号と見出しを残して本文削除、JR四国は「第140条の3 削除」と対応が分かれた。

JR東海が先鞭をつけた運送約款の改正履歴における改定条項の新旧対比は、JR九州JR東日本も掲載しているが、東武鉄道京阪電鉄もこれにならっている。相模鉄道運送約款改定履歴は、改定になった規則の名称だけである。

作成途中でアップしてしまった、本州3社のIC乗車券約款の10年前との対比を更新した。旅規と違い各社が独自に制定しているので、それぞれの特徴がでているのが興味深い。例えば免責条項は、JR東海がもっとも先進的で、過失責任は直接損害に限るが、重過失には適用しない(26条の2、39条)。JR西日本は故意または重過失を除き免責としている(23条の2、36条)。JR東日本は故意または過失による賠償責任に言及していない(18条)。

クイズページについても、泉外旭川駅の開業及び赤岩駅JR北海道の18駅の廃止を「全国のJR駅リスト」に、西武多摩湖線山口線の起終点変更を「全国の鉄軌道路線リスト」に反映する必要があるが、4月1日の日高本線鵡川・様似間廃止にあわせて更新するので、ご了解ください。

 

 

*1:日本最大のバス会社の神奈川中央交通も、一般乗合旅客自動車運送事業運送約款を公開していない

*2:urlが変更になったものは updated と表示した

*3:JR西日本はホルダーを、JR九州はファイル名を変更した