基準規程特例の周知

4月8日の記事で、基準規程153条の2の定期乗車券・回数乗車券による他経路乗車の取扱について書いたところ、JR西日本JR東西線の開業後、この特例の周知につとめていたとのコメントがあった。
このような基準規程で定めている特例について、JR各社がウェブで周知しているか調べてみた。時刻表のピンクのページに掲載されている特例については各社ともウェブに掲載している。

内容 ウェブ(JR東日本きっぷあれこれ等)
101-2 首都圏の普通列車グリーンによる乗継 普通列車のグリーン料金
109 特定区聞を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方
110 列車特定区間 特定の列車による運賃・料金計算の特例
113-2 東京・名古屋・大阪附近の区間特定普通運賃 普通旅客運賃(特定区間)
114 特定都区市内等にある駅に関連する普通旅客運賃計算方の特例
115 東京近郊区間相互発着であつて特定都区市内等にある駅に関連する普通旅客運賃計算方の特例
117 東京・名古屋・大阪附近の区間特定定期運賃 通勤定期旅客運賃(特定区間)通学定期旅客運賃(特定区間)
145(2項) 大阪市内・神戸市内発着の乗車券による大阪・新神戸駅乗継 途中下車
149 特定の分岐区間区間外乗車 特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例
150 特定都区市内等発着乗車券の都区市内での復乗 特定の都区市内駅を発着する場合の特例
150(2項) 大阪市内発着乗車券の尼崎経由乗車 「大阪市内」発着となる乗車券による市外乗車の特例
151 分岐駅通過列車の区間外乗車 分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例
151-2 海田市・広島間の区間外乗車 分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例
152 特定列車の区間外折返し乗車 特定の列車による折り返し区間外乗車
153 定期乗車券による他経路乗車
153-2 定期乗車券及び回数乗車券の他経路乗車
155 特定都区市内発着の乗車券との併用による他経路乗車
157 山手線内発着の乗車券による他経路途中下車

150条の特定の都区市内駅を発着する場合の特例は、「復乗」という言葉は使っていないが、「同じゾーン内ならどの駅でも乗り始める(または降りる)ことができます」にその意味を込めているのだろう。
ウェブに掲載されていない特例は、どれだけ周知されているだろうか。
109条は、69条・70条特定区間の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合、実際の乗車経路により運賃を計算する規定である。114条と115条は旅規86条の特定都区市内*1にかかわる運賃計算の適用に関するかなり複雑な規定で、一読しただけで意味をつかむことが難しい。114条は、乗車区間が中心駅から200キロ以下で特定都区市内制度が適用されず、これが適用される遠方駅までの運賃よりも高くなる場合、安い方の運賃を適用できるという規定。115条は東京近郊区間相互発着で、着駅と中心駅との営業キロが200キロ超の場合であっても、その最短経路の営業キロが200キロ以下の場合は、特定都区市内制度を適用せずに、運賃計算できるという規定である。これらの運賃計算にかかわる規定は、マルスに実装されているので、周知の必要はないということなのか。
乗車券の効力の規定では、155条が153条の2と同様かなり乗客に有利な規定である。都区市内発着の乗車券と境界駅まで(から)の乗車券とを併用して乗車する場合、実際の乗車経路と異なった境界駅まで(から)の乗車券の併用を認めるもので、知らないとその恩恵にあずかることができない。
本日、データルームのJR旅客制度特例の変遷を更新し、「157条選択乗車区間」の項に位置付けていた基準規程155条の併用乗車券による他経路乗車の記述を「その他の他経路乗車」として独立させ、引用条文を2009年現行版から品鶴線武蔵小杉駅開業後の2011年現行版に変更した。
追記(4月11日):コメントがあった基準規程114条のマルス実装は確認したわけではなかった。コメント通り、マルスに実装されていない例をブログの記事で見つけた。
きっぷメモの2015年4月14日の記事で、本郷台(根岸線横浜市内)から稲子(身延線)の根岸線横浜線・中央線経由の片道乗車券が紹介されている(営業キロ214.0km、運賃計算キロ220.4km。横浜・稲子間の営業キロが200キロを超えないため旅規86条は適用されない)。基準規程149条に基づき発券された出札補充券の運賃は3,670円(旅規86条が適用される本郷台・芝川間の運賃)、旅規86条の本則通りのマルス券の運賃は4,000円である。
同記事によると、このような事例は横浜市内のほか、仙台市内、広島市内、北九州市内で起こるが、横浜市内以外はマルスに実装されているとのこと。
追記2(4月12日):基準規程155条(併用乗車券による他経路乗車)のコメントについても追記する。
都区内〜大阪市内の新幹線回数券で尼崎まで乗越し、精算額が加島からの運賃だったということは、特別企画乗車券*2に155条が適用されたことになる。旅規などの共通ルールは特別企画乗車券にも適用されるが、お得なきっぷルールに書かれているように、適用順位は

【きっぷ毎に決められたルール>「お得なきっぷ」のルール>旅客営業規則などの共通のルール】

となっている。
きっぷ毎に決められたルールである新幹線回数券(普通車指定席用)の利用条件に

乗車列車の変更(指定列車出発時刻前に限り何度でも)を除き、乗車変更のお取扱いはいたしません。きっぷの区間外に乗り越しの場合は、その乗車区間に必要な運賃・料金を別途お支払いいただきます。

とあり、乗越区間に必要な運賃は基準規程155条を適用した運賃となるのだろう。

*1:いずれも87条の東京山手線内にも適用

*2:かつては旅規第41条の2に規定された急行回数乗車券があったが、JR東西線の開業(1997年3月8日)以前の1992年9月25日に廃止されている。また、当時基準規程155条はなかった。