特殊割引乗車券発売規則

旅規ポータルの旅規アーカイブスに、特殊割引乗車券発売規則(1967年6月20日施行)を掲載した。エコノミークーポン、訪日観光クーポン、特殊観光乗車券、特殊往復乗車券、臨時割引乗車券が対象で、それまで個別の公示や達示で定めていた営業割引制度を、周遊割引を除いて一本化した。
日本国有鉄道百年史」(第13巻、pp49-52)などによるとそれぞれの概要は次の通り。
エコノミークーポン(エック)は、1966年3月の運賃改定による旅客減に対処するため設定された「発から着までの鉄道(乗車券・指定券とも)・バス・旅館等旅行に必要なあらゆるものをパックし、大胆な割引*1を取り入れ、旅客の希望地を狙った完全レディーメイド商品」である。宿泊券を伴う第1種と乗車券だけの第2種があった。まだエックの名称はなかったが、67年1月13日から3月中旬にかけて大阪、名古屋、静岡方面から新幹線利用で設定された「蔵王スキー乗車券」が第1号とされている。
訪日観光クーポンは、個人インバウンド旅行者向けの割引制度である。1964年3月18日制定の訪日観光乗車券発売規則(11コースを設定、10%の割引)を継承したもの。なお、旅規には以前から訪日観光団体の規定があった。
特殊観光乗車券と特殊往復乗車券は、1959年6月15日の営達988号「臨時特殊割引乗車券の発売について」に基づき発売された3種類の割引乗車券を引き継いだ。旅客誘致による増収のほか、出札窓口の混雑緩和、旅客運賃の逋脱防止、輸送調整の目的があった。第1種(夏季の海水浴・登山・キャンプ、冬季のスキー・スケート客を対象、5-10%割引)と第3種(閑散期の観光客を対象、10%割引)が特殊観光乗車券に、第2種(第1種の対象客以外の混雑地向け旅客を対象、10%割引)が特殊往復乗車券となった。1970年10月1日、特殊観光乗車券は特別企画乗車券に改められた。
臨時割引乗車券は、従来輸送調整の目的で対象を限定して発売していた「大会割引・総会割引・会合割引」を引き継いだもの。
この規則は特別企画乗車券の原点であるが、現在JRに特殊割引乗車券発売規則は存在せず、各種の特別企画乗車券の約款は公告されていない。JR東日本の部内規程である「特殊割引乗車券設定規程」*2は、設定の目的を

(設定の目的)
第3条 特殊割引乗車券の設定にあたつては、次の各号に定める事項を目的とし、かつ純収入を減少させないと見込まれる範囲内で設定する。
 (1) 閑散期または閑散線区等に対する積極的な営業施策の展開により、旅客の誘致を図る。
 (2) 他運輸機関との競合区間で、積極的に営業施策を展開する。
 (3) 催し物、博物館等の見物客の当社線の利用促進を図る。
 (4) 宿泊券、船車券等と組み合わせて販売することにより、旅客の誘致を図る。
2 前項に規定するほか、旅客の利用促進を図り、かつ増収が期待される場合に設定することができる。 

と定めている。青春18きっぷは、第2項に該当するのだろうか。また、特殊割引乗車券の設定については、第4条で営業部長*3に委ねている。

*1:30%以内で本社が設定。その後69年7月に20%以内のものについては鉄道管理局長または地方自動車部長が設定できるようになり、70年10月からこれを30%以内に改定した。

*2:2011年10月日本鉄道図書版による。

*3:一部は支社長