Suica/PASMO約款のIC運賃の規定

消費税増税にあたり1円単位のIC運賃を導入する首都圏のSuicaPASMOの約款は、旅規の運賃体系と異なったIC運賃を規定し、大幅に改定される。JR東日本ICカード乗車券取扱規則は、電子パンフレットでウェブに掲載され、PASMOICカード乗車券取扱規則を記載した「PASMOご利用案内」は駅で配布されている。
SuicaICカード乗車券取扱規則は、第2編旅客営業に「第2章IC運賃」として28条から37条までが挿入される。第28条は、IC運賃の適用範囲を次のように定めている。

IC運賃
第28条 旅客が、第23条第1項に規定する区間内を第22条第1項の規定によりICカード乗車券のSFを利用して自動改札機から入場し、同一のICカード乗車券により降車駅の自動改札機から出場する場合の運賃は、次条から第37条により算出した額(以下「IC運賃」といいます。)とします。
2 ICカード乗車券を他の乗車券と併用した場合は、IC運賃は適用しません。ただし、第24条第5項のただし書きの規定による場合を除きます。

第1項は、参照している第22条第1項のICカード乗車券の使用法とダブった、冗長な規定である。SFを利用する場合だけで、定期運賃は該当しないといいたいのだろうか。その場合でも「第22条第1項の規定によりICカード乗車券のSFを利用する場合の運賃」で十分で、自動改札機の入出場を繰り返す必要はない。また、カッコ内のIC運賃の定義は「出場する場合の運賃」の後に挿入すべきだろう。なお、「第24条第5項のただし書き」とは、IC定期乗車券の区間内の駅を発着する他の乗車券との併用及び新幹線の乗車券と併用して新幹線の自動改札口を使用する場合である。
幹線のIC運賃を定めた第31条第1項*1は、

(幹線内相互発着の大人のIC運賃
第31条 旅客規則第3条第1号の5に規定する幹線内相互発着となる場合の大人のIC運賃は、次の各号により算出した額を合計した額とします。
(1)旅客規則第77条第1項第1号の規定を適用して算出した額
(2)前号により算出した額に100分の8を乗じは数整理した額

は数整理とは、第31条(小児のIC運賃)で「1円未満のは数を切り数てて1円単位」とする方法と定義されている。第32条地方交通線、第33条の山手線内、第34条の電車特定区間内のIC運賃は、旅客規則に定めるそれぞれの賃率を用いて、第77条第1項第1号の規定を適用して算出した額に、は数整理した消費税を加算した額となっている。税前運賃は従前どおり10円ないし100円単位で計算し、加算する消費税を1円単位とする計算方法が示されている。
PASMOICカード乗車券取扱規則(鉄道)は、第6条を新設し、IC運賃を規定する。

(運賃)
第6条 この規則における普通旅客運賃は、第5条第1項の定めにより乗車した場合に適用する運賃をいう。
2 前項に定める普通旅客運賃のうち、大人片道普通旅客運賃は、旅客の乗車する発着区間のキロ程により、次によって区分した1円単位運賃とする。
(記載省略)

Suica規則の第28条に相当する規定が第1項。第5条第1項は同一ICカード乗車券の改札の規定だから、pasmoの条文の方がSuicaよりスマートである。第2項の対キロ区間制運賃は、各事業者が定める取扱規則によると注記されている。また、IC運賃を10円単位とする事業者は、第2項が次のようになる。

2 前項に定める普通旅客運賃は、旅客営業規則に定める運賃とする。

1円単位の事業者の規則には、第3項がある。

3 旅客が第5条第1項の定める使用方法によらず乗車した場合であっても、当社が特に認めた場合は、前項に定める普通旅客運賃を適用することがある。ただし次の各号のいずれかに該当する場合は、旅客営業規則に定める普通旅客運賃とする。
(1)第5条第7項の規定により他の乗車券を併用した場合で、旅客営業規則に定める乗車券で旅行を開始した場合
(2)第5条第7項の規定により他の乗車券を併用した場合で、併用した乗車券について旅客営業規則に定める区間変更の取扱いを行った場合

第5条第7項は、IC定期乗車券の区間内の駅を発着する他の乗車券との併用を認める規定であるから、当該乗車券の運賃を適用するのは当然だろう。「当社が特に認めた場合」とは、なにを想定しているのだろう。第5条第5項(現在は第6項)のICカード乗車券が改札機で使用できない故障等の事態だろうか。

*1:2項は旅規77条2項のキロ地帯制の準用規定で、3月20日の記事にコメントがあったもの