開業日以前を有効開始日とする乗車券

開業日以前を有効期間の開始日とする乗車券が発売された例をOSAKA CITYさんが見つけてくれた。種村直樹自選作品集「鉄道を書く」第3巻所収の「きまぐれ列車出発進行」(初出は、学習研究社「旅行ホリデー」誌1974年4月10日号)に、1974年3月1日開業の予土線を経由する「東京都区内−岡山−宇野−高松−(土讃)−窪川−(予土)−北宇和島−(予讃)−堀江−仁方−糸崎−岡山」という片道乗車券を2月27日御徒町駅で購入したことが書かれていた。
2月27日東京駅発の347M(ムーンライトながらの前身の夜行鈍行)で西下するために、開業日以前に有効開始となる乗車券の発売を請求したのだが、東京・中村間の普通列車グリーン券(81キロ以上300円)を同時に購入している。当時のグリーン券は、旧1等乗車券の制度を受け継ぎ、複数の列車を乗り継ぐことができ、有効期間2日、継続乗車船も適用された。
出札係の対応は、はじめ「これは、まだ売れませんよ。開通していないから、書類が来ていない」だったが、上役の駅員が電話で本社に問い合わせた結果、「開通したものとして売っていい」ことになったという。

「二月二五日付けの『鉄道公報』[国鉄本社発行の部内資料。一般にも頒布していた]に営業開始の公示が出ているじゃないか」と開き直る手もあるけれど、私は好まない。もっぱら、相手の気分も悪くせず、自然な形で解決する主義である。

と書かれており、国鉄にコネがあったレールウェイライター氏だから特別扱いというわけではなかったようだ。
2月25日付けの国鉄公示は、

日本国有鉄道公示第269号
 昭和49年3月1日から、予土線江川崎停車場から若井停車場に至る鉄道において、次の各号により、旅客運輸営業を開始する。
  昭和49年2月25日
  日本国有鉄道総裁 藤井松太郎
1 線路各称 予土よど
2 停車場名 所在地及び営業キロ
  (表省略)
3 営業範囲
  (表省略)
日本国有鉄道公示第270号
 日本国有鉄道線路名称(昭和24年6月日本国有鉄道公示第17号)の一部を次のように改正し、昭和49年3月1日から施行する。
  昭和49年2月25日
  日本国有鉄道総裁 藤井松太郎
 予讃線の部中宇和島線の項を次のように改める。
 予土よど線 北宇和島・若井間

の2件である。国鉄本社の対応は、この公示を発売の根拠にしたのだろう。
4月27日の記事に書いたように、現行の区間変更による取扱いは、運賃の収受額に矛盾が出る。これに対し、乗車券の有効期間中に開業日を迎える新線経由の乗車券を発売するのは、「実際に乗車する経路による旅客運賃・料金の計算、乗車券類の券面表示事項にしたがった乗車」という旅規の原則に合致し、合理的である。いつから、区間変更+過剰額払いもどし方式に変更になったのだろうか。
2005年5月にはてなのブログを開始して以来、この記事が201回目の記事となった。コメントをいただいた方々をはじめ、ご愛読に感謝します。