旅客事務用鉄道線路図

集英社から刊行が始まった「週刊・鉄道絶景の旅」。創刊号に付録「旅客事務用 鉄道線路図 昭和35年3月10日現在」がついている。国鉄職員が業務用に使っていた地図の復刻版である。創刊号特別価格の290円はこの付録だけでも価値があると購入した一人である。
新幹線開業の前だが、在来線の幹線網はほぼ完成していた。その後開通した幹線は、青函トンネルと瀬戸大橋を除けば、石勝線、みどり湖経由中央本線湖西線くらいである。国鉄のローカル線だけでなく、和久田康雄氏の「私鉄史ハンドブック」で名前だけ知っている地方私鉄もほとんど残っていた。
同時に国鉄バス路線網が充実していた。鉄道路線を補完(先行、代行、短絡、培養)する国鉄バス路線網の拡張期であった。路線は当時の時刻表の索引地図にも示されているが、線名が表示されているのがありがたい。さらに、国鉄連絡船だけでなく、多くの民営航路があったことがわかる。瀬戸内海など、本州と四国の港と離島を結ぶ航路が縦横にあった。旅客事務用地図に掲載されているということは、これらの航路は、国鉄と連絡運輸していたのだろう。
高度成長期に入る前の日本の交通体系を知ることができる貴重な地図である。