加美・久宝寺・新加美間の区間外乗車

12月28日の記事のコメントがあったが、現在店頭に並んでいる時刻表3月号によると、大阪市内発着の乗車券で加美・久宝寺・新加美間の区間外乗車が認められた。JTB時刻表は、

大阪市内発着の乗車券による市外乗車の特例

大阪市内発または着の乗車券で途中下車しない限り、加島-尼崎-塚本間または、加美-久宝寺ー新加美間にご乗車になれます。

と、JR時刻表

大阪市内」発着となる乗車券による市外乗車の特例
大阪市内」発着の乗車券で途中下車をされない限り、加島~尼崎~塚本間及び加美~久宝寺~新加美間をご乗車になれます。

 と記載し、大阪市内の地図に区間外乗車区間を点線で示している。

基準規程第150条第2項の加島-尼崎-塚本間を第1号とし、加美-久宝寺-新加美間を第2号として挿入すると思われる。おそらく、第155条(併用乗車券による他経路乗車の取扱いの特例)にも第13号、第14号として、大阪市内駅発着の乗車券と新加美駅着発の乗車券の併用による加美・久宝寺間の他経路乗車が追加されるだろう。

ところで、尼崎と久宝寺と同じく、特定都区市内から1駅だけ外れている大船について、JR東日本横浜市内発着の乗車券で戸塚-大船-本郷台間の区間外乗車を認めているという話を聞いた。通達があるのか、単に黙認しているのかはわからないが、それなら、150条2項に記載し、ウェブや時刻表のピンクのページ*1等で周知すべきだろう。

*1:JTB時刻表のJR線営業案内のページは、昨年12月号から紙が白紙になり、ピンクのページと呼べなくなった

2019年春の旅規改正

JR九州のサイトに2月5日付の旅規改正公告が掲載された。JR東海運送約款の改正履歴は未掲載である。

大半はおおさか東線開業、中央本線特急の「座席未指定券」導入等すでに周知されている事項である。

第86条第5号の大阪市内の地図に、久宝寺を除くおおさか東線の駅が追加され、第187条第3号のカッコ内が「大阪市内(南吹田駅高井田中央駅JR河内永和駅JR俊徳道駅JR長瀬駅及び衣摺加美北駅を含む。)と表示することがある。」となった*1。また、同条第4号の京都市内に、梅小路京都西駅が追加された。

中央本線特急については、別表第1号の2(列車群)第1項に第3号として、群名「あずさ・かいじ・はちおうじ・おうめ・富士回遊」が追加され、第125条第1号ロ(ハ)の料金表に「400キロメートルまで」の料金が追加された。

その他、特別車両個室料金、寝台料金が一部削除された。

3月24日付の山田線宮古・釜石間の三陸鉄道移管に伴い、別表第1号地方交通線の山田線の区間が変更になった。4月1日石勝線夕張支線の廃止は、旅規には影響しない。1984年4月幹線と地方交通線の賃率が分離された以降の幹線の廃止は、1994年5月の函館本線上砂川支線、1997年3月の片町線京橋・片町間、1997年4月の美祢線大嶺支線、1997年10月の信越本線横川・軽井沢間に続く5件目か (片町線信越本線は、コメントを受けて追記)。

*1:191、195、225、226条の乗車券様式裏面の表示事項もあわせて改定された

基準規程155条と150条2項

基準規程155条の併用乗車券による他経路乗車は、特定都区市内の境界駅から外に伸びる二つの路線が、エリアの近くで閉じているケースに設定されている。12月28日の記事のコメントで、2011年以降2号追加されたという情報があった。最近開業した新線でこのようなケースがあったか考えて、仙石東北ラインに思い至り、あたりだったと確認された。
あらためて155条の設定区間をまとめると、次のとおり。

都区市内 他経路 キロ 券面経路 キロ
1,2 仙台市 岩切・高城町 15.6 中野栄高城町 15.2  0.4
3,4 東京都区内 葛西臨海公園・南船橋 15.4 小岩・南船橋 13.2  2.2
    葛西臨海公園西船橋 13.5 小岩・西船橋  7.8  5.7
5,6   蒲田・武蔵小杉間 11.3 西大井・武蔵小杉間  6.4  4.9
7,8 横浜市 戸塚・大船間  5.6 本郷台・大船間  3.6  2.0
9,10   鶴見・武蔵小杉間  7.8 矢向・武蔵小杉間  4.9  2.9
11,12 大阪市 塚本・尼崎  4.3 加島・尼崎  2.2  2.1
    (加美・久宝寺)  1.7 (新加美・久宝寺)  1.6  0.1

左が他経路乗車区間、右が併用乗車券の券面区間である。短い距離の併用乗車券で、長距離の区間を乗車できる。とくに蒲田・武蔵小杉間は4.9キロ差で、運賃キロ帯が1ランク以上下がるケースもありうる。しかし、都区内着で南武線武蔵中原方面に行く場合、西大井経由のほうが時間的にも早いから、あまり需要がないだろう。また、3,4号に併記されている葛西臨海公園西船橋間は、併用乗車券の小岩・西船橋間より0.2キロ短く、他経路乗車の意味がない。
大阪市内の拡大で155条に追加設定されるとすれば、新加美発着の久宝寺以遠の併用乗車券で、他経路乗車区間が加美・久宝寺間ということになろう。0.1キロの差しかないが、大阪駅から環状線関西本線への直通列車が利用できる駅で、155条適用で運賃キロ帯が1ランク下がる駅があるかもしれない。紀勢本線から関西本線方面は、大阪市内着の乗車券と併用するよりも、目的の駅までの乗車券を購入したほうが安い。
12月28日の記事のコメントで、150条2項の新加美・久宝寺・加美間の区間外乗車は、旅客流動上設定されないという意見、別の特例にしてもよいという意見があった。紀勢本線から新加美までの場合は、たしかに単駅指定にしたほうが安上がりである。155条の適用区間のうち7、8号の大船駅横浜市内から1駅だけ外れていて、*1、尼崎や久宝寺と同じ状況である。東京方面から大船で乗換えて本郷台に戻る需要はあるだろうから、150条2項に追加してもよいと思った。こうしてみると、12月28日の記事の追記2で「150条2項に規定されず、155条だけに規定されることはないと思う」と書いたが、「155条だけ」もありうるかもしれないと考え直した。


*1:大船駅鎌倉市横浜市の市境にまたがっている

最近のJR旅規改定公告

JR東海運送約款の改正履歴はこまめにチェックしていたのだが、12月20日付と12月27日付の「旅客営業規則の一部改正」が掲載されていた。
12月27日付は、4月1日施行の「持ち込み禁制品の一部見直しに伴う改正」で、12月28日の記事で取り上げた旅規の改定条文が明確になった。12月20日付は、「グランクラス(A)を設備した特別急行列車の運転区間変更等に伴う改正」とされ、別表第1号の3は「はやぶさ」「はやて」の運転区間に仙台発着を追加削除、1月1日施行としている。また、2018年3月17日遡及適用で183条(乗車券類の表示事項)と223条(特殊指定共通券の様式)が改定された。183条は、3月17日施行の改正時に第2項が挿入されたのに、第3項に残っていた「前項」を「第1項」に訂正したもの。223条は各様式の改正から漏れていた、西暦表示への改定。
ウェブに掲載しているJR北海道JR九州の旅規改定公告とJR東日本JR西日本JR四国のウェブの旅規(日付は最終更新日)をあわせてチェックしたところ、次のような差異があった。


 
JR東海
公告
JR北海道
公告
JR九州
公告
JR東日本
18/06/29
JR西日本
18/11/20
JR四国
18/04/01
183条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/08/20付 反映 反映 反映
223条 2018/12/20付 2018/11/21付 2018/11/26付 様式省略 様式省略 様式省略
別表1号の3 2018/12/20付 なし 2018/11/26付 未反映 省略 省略

JR九州の223条改定は2018年3月17日遡及適用ではなく、2019年1月1日2018年10月1日施行となっている。また、別表1号の3に仙台発着が記載されていない。JR東日本の旅規は、2018年6月29日現在となっていて、別表1号の3に仙台発着も記載されている。6月29日は、昨年4月時点で未反映だった183条2項及び290条を訂正した日だろうか。なお、2016年3月26日の85条1号の改定(JR北海道に係る加算運賃の規定に、北海道新幹線の開業によって生じた「幹線相互を乗車する場合」を追加)をいまだに記載していない。
よくわからないのは、別表1号の3の改定。グランクラス車両を連結した仙台発着の「はやぶさ」は以前から運転されている。別表1号の3は北海道新幹線開業の2016年3月26日に新設されたものだが、当時のJR東海の改正履歴では仙台発着が記載されており平成28年2月24日付参照)、旅規ポータルのJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)に反映している。その後削除された形跡はなく、JR東海は過去の条文を忘れているのだろうか。
183条と223条については、JR東日本旅規改訂履歴を更新し、2018年3月17日付改定に追加した。

来春の旅規改正項目

来春のJR旅規改正に関係するリリースが2件出た。一つは、おおさか東線に適用する運賃について国土交通省近畿運輸局認可申請したというJR西日本のリリース。新規開業区間は、特定都区市内、電車特定区間および大都市近郊区間に含まれることになった。特定都区市内の拡大は認可申請で、他は報告という扱い。
南吹田駅吹田市に立地するが、既開業区間東大阪市内のJR河内永和高井田中央JR俊徳道、JR長瀬、衣摺加美北とともに大阪市内駅となる。八尾市の久宝寺は除外された。旅規86条の大阪市内は、

大阪市内(新加美駅を除く南吹田駅高井田中央駅JR河内永和駅JR俊徳道駅JR長瀬駅及び衣摺加美北駅を含む。)

となるのだろう。
もう一つは、手回り品ルールの改正に関するJR6社連名のリリース。2018年6月9日に発生した東海道新幹線「のぞみ265号」車内における刃物による殺傷事件を受けて鉄道運輸規程昭和17年2月鉄道省令第3号)が改正されるのに伴い、19年4月1日から刃物を持ち込み禁止の対象にするもの。2017年6月の新幹線車内ガソリン焼身自殺の結果、2016年4月28日から旅規別表4の可燃性液体の適用除外項目が縮小されたことに続く改正。

追記(12月30日):コメントを受け、高井田中央を挿入した。
おおさか東線久宝寺を除き大阪市内駅となることで、「大阪市内」発着の乗車券で、久宝寺経由の加美・新加美間の区間外乗車が認められるか注目される。認められれば、基準規程150条2項

規則第86条第5号の規定により発売した大阪市内発又は着の普通乗車券を所持する旅客に対しては、次の図に掲げる太線区間(注:塚本・尼崎・加島間)の全部又は一部について、別に運賃を収受しないで、乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。ただし、尼崎駅が券面区間外である場合は、尼崎駅で下車しないで太線区間の全部を乗車する場合に限る。

に追加されることになるだろう。
もう一つ、鴫野・放出間は、片町線おおさか東線の二重戸籍になるのだろうか。

追記2(1月2日):12月31日のコメントについて。
基準規程155条は(現在も2011年当時の規定どおりであれば)、特定都区市内発着の乗車券と境界駅まで(から)の乗車券とを併用して、券面経路と異なった境界駅まで(から)の乗車を認める規定である。この条項は2006年1月現行版基準規程にはなく、2009年4月現行版に初めて記載された*1。この規定により、実際の乗車経路の運賃よりも安い乗車券を併用して他経路の乗車ができる(JR旅客制度特例の変遷「その他の他経路乗車」参照)。155条9、10号に大阪市内着(発)の乗車券と加島駅発(着)の乗車券(尼崎以遠立花、塚口方面)と併用して、塚本・尼崎(尼崎・塚本)間の他経路乗車ができると規定されている。
150条2項に塚本・尼崎・加島の区間外乗車が規定された*2のは、1997年3月8日のJR東西線開業時であり、155条よりも早い。久宝寺が1駅だけ大阪市内から外れるのは、尼崎と同じ状況であり、区間外乗車が本筋と思う。150条2項の区間外乗車に規定されれば155条にも規定されるだろうが、150条2項に規定されず、155条だけに規定されることはないと思う。

*1:以前からローカルルールとして存在したかは不明

*2:現行規定とは若干条文が異なる

東急の旅規改定

東急の運送約款・規約のページが更新され、12月14日改定の旅客営業規則が掲載された。大井町線有料座席指定サービスQシートの導入に伴うもの。10月23日リリースの「列車指定券」の用語は記載されておらず、東横線S-train座席指定券に統一された。また、「車内で列車指定券は販売しませんのでご注意ください。」と記載されていたが、車内でも発売されるようだ(以上、10月28日記事参照)。
第61条(座席指定券の発売)は、「団体旅客に対する座席指定券大井町線座席指定列車は除く。)は、団体用座席指定券兼補充団体乗車券によって発売する。」となっただけで、第3項の「座席指定列車に、座席指定券を事前に購入しないで乗車した旅客に対しては、当該列車の車内で、座席、乗車駅及び乗車区間を指定した座席指定券を発売する。」は改定されていない。
第139条の2(座席指定料金)第1項に、第2号として大井町線座席指定列車の「大人・小児 400円」が記載された。第182条の4(座席指定券の効力)第1項は、

座席指定券を所持する旅客は、その券面指定された当該列車に限って、東横線座席指定列車においては、券面に表示されている区間を乗車することができる。また、大井町線座席指定列車においては、乗車駅からたまプラーザまでの区間とする。ただし、たまプラーザ以遠においても当該座席は、旅客の降車駅まで継続して使用することができる。

と改定された。第219条(座席指定券の様式)に大井町線座席指定列車の改札窓口発行の指定券の様式が、第221条(車内座席指定券の様式)に「車内座席指定券および座席変更券」と「座席変更券(現金購入)・ 座席変更券(web 購入)」の様式が、第221条の2(座席指定特別補充券の様式)に「大井町線座席指定列車 座席指定特別補充券」が追加された。

富山地方鉄道の旅規

富山地方鉄道鉄道線旅客営業規則軌道線旅客営業規則をウェブに掲載していた。平成30年2月1日改正とあり、今春に掲載されたものと思われる。
富山地方鉄道には、稲荷町〜寺田〜岩峅寺稲荷町環状線区間がある。パスネットの不思議の付表環状線の旅規規定で、以前知人が閲覧してくれた環状線区間の運賃計算規定を紹介している。当時の33条、72条、73条が32条、70条、71条と条番号が変わっているが、条文は当時のままである。これに基づき「パスネットの不思議」及び「環状線の旅規規定」の参照条項を更新した*1
環状線の規定では、定期乗車券による選択乗車の規定が69条にある。

(選択乗車)
第69条 電鉄富山稲荷町不二越の各駅と岩峅寺・横江・千垣・有峰口・本宮・立山の各駅との相互間を発着とする定期乗車券を所持する旅客は、乗車券券面に表示される経路にかかわらず選択乗車することができる。但し、乗車券券面に表示された経路外での途中下車はできない。

舌足らずだが、不二越からも稲荷町・寺田経由で乗車できるということだろう。また、この条の細則として、

軌道線定期乗車券(鉄道軌道連絡定期乗車券を含む)を所持する旅客は、不二越電鉄富山〜南富山間を乗車及び途中下車することができる。

と規定されている。各条に、細則の条文を付記しているのは、親切である。
両規則の第15条「鉄道と軌道の連絡割引定期乗車券の発売」、第16条「鉄軌道と自動車共通定期乗車券の発売」も興味深い。後者は、2016年9月21日の記事で紹介した広島電鉄の「どっちもパス」と同様のサービスで、不二越・上滝線の4区間の定期券で平行する軌道とバスに乗車できる。その定期運賃は第47条に

旅客の乗車する共通乗車区間に対する鉄道または鉄軌道区間の定期旅客運賃と自動車区間の定期旅客運賃とを比較して、高額となる定期旅客運賃を適用する。

と規定されている。
旅規掲載にともない、旅規ポータルのリンク集を更新し、両規則を追加した。4月時点で大阪市例規集に残っていた交通局関連の規程類がその後削除されており、リンクを削除した。またデッドリンクとなっていた大阪高速電気軌道の旅規のURLを変更した。大阪市例規集にあった連絡運輸規程、振替輸送取扱規程等は、大阪メトロに記載されておらず、読めなくなった。

*1:あわせて、大阪市交通局の高速電車乗車料条例施行規程を大阪市高速電気軌道の旅規に変更した