ICカードで東海道・山陽新幹線乗車

JR東海JR西日本が9月30日、交通系ICカード東海道・山陽新幹線に乗車できる新サービス、スマートEXを開始すると報じられている。
ニュースリリースによると、手持ちのクレジットカードと交通系ICカードを登録し、座席を予約するとチケットレスで乗車できるというもの。決済はクレジットカードで行い、交通系ICカードのSFを支払い手段とするわけではないようだ。
年会費は不要だが、割引額は通常の運賃・指定席特急料金から200円引きにとどまる。ただし、従来の従来のEX-ICサービスと同様、新幹線のみに適用され、在来線へ(から)の乗継は、特定都区市内制度を含めて適用されず、差額はICカード乗車券から引き落とされる。一方、片道の営業キロが 601キロ以上の区間に「スマートEXサービス(往復割引)」 が設定され、こちらは往復割引乗車券と異なり、購入時点において最大1ヵ月先の復路の列車を予約できる。
スマートEXのホームページが開設されているが、まだ会員登録はできず、「規約への同意」の画面から会員規約を見ることもできない。
JR東海ICカード乗車券運送約款は、8月14日に改定され、第2条(適用範囲)の後段に

ただし、ICカード乗車券をEXサービス運送約款(平成20年3月社通達第73号)第2条第3項第13号に定めるEX-ICカード等として使用する場合(以下、「EX-ICカード等としての使用」という。)については、EXサービス運送約款の定めるところによる。

が追加された。同日付で全面改定されたEXサービス運送約款に、スマートEXも規定されているが、会員規約は記載されていない。なお、第10条第1項第1号に「IC入場」が規定され、ICカードは会員IDと照合・確認する手段であることがわかる。

広島電鉄運賃改定など

明日8月1日から広島電鉄宮島線・市内線の運賃がすべての区間で20円値上げされる。これに先立って、鉄道事業者の運賃比較を、2017年8月版として更新した。あわせて、漏れていた昨年4月15日の松浦鉄道の運賃改定を反映した。運賃ランキング得点順で、広電宮島線は5位から15位、市内線は17位から32位、松浦鉄道は108位から132位に、勝率順ではそれぞれ、3位→10位、14位→34位、110位→142位と順位を下げた。
7月8日付日経新聞中国版の広電の路面電車・バス、「デルタ内」時間制運賃 循環バス新設 は、広電が「デルタ(三角州)のなかは電車とバスが均一運賃になるようにしたい」と検討を開始した、と報じた。中心部の電車とバスの運賃共通化はヨーロッパのゾーン制運賃への第一歩とも見えるが、広電の「検討」には「検討倒れ」に終わった前例がある。前回の広電運賃値上げについて書いた2012年11月9日の記事で、中国新聞の「路面電車の運賃を全線均一にする検討をしている」との報道を紹介したが、5年たっても実現していない。
本日のウェブ更新では、駅名改称の研究及び別表駅名改称 1987-2017に、4月1日の岡山電軌の駅名改称(東山→東山・おかでんミュージアム)を記載した。最長片道切符のルート変遷 1961-2017の表2「国鉄・JR鉄道ネットワークの変遷」に、記載漏れだった本四備讃線開業時の坂出・丸亀間の改キロを追加(もちろん仁堀航路廃止後であり、最長ルートに影響を与えない)。またAsaPi!氏の最長ルート変遷地図に新たに1961年4月から66年10月までの最長ルート地図が掲載されたため、これにリンクを貼った。
追記(8月1日):朝7時前に広電の旅客営業規則を覗いたら、8月1日改正に更新され、新運賃が記載されていた。当然とはいえ、素早い対応である。

常磐線駒ケ嶺・浜吉田間の営業キロ

12月10日運転再開した常磐線駒ケ嶺・浜吉田間は、線路の内陸移設で営業キロが変更になった。入手したJR東日本仙台支社のパンフレットによると、駅間距離の増減は






駅間営業キロ営業キロ増減
駒ケ嶺・新地4.44.2-0.2
新地・坂元5.45.50.1
坂元・山下4.54.90.4
山下・浜吉田3.94.20.3
で、全体で0.6キロ増加している。

 12月19日の記事に書いたように、運賃計算に反映されるのは、磐越西線郡山富田駅の開業にあわせて4月1日からということだが、パンフレットには、

●2016年12月10日(土)の常磐線相馬駅浜吉田駅間の運転再開に伴い、一部区間営業キロが変更となります。

●普通乗車券、普通回数券及び定期乗車券につきましては、来春に予定される磐越西線新駅の開業時期に合わせて新たな営業キロにより計算した運賃に変更します。

●変更後の運賃が現行の運賃より低廉となる区間については、12月10日(土)より変更後の運賃でお求めいただけます。

とあり、距離が0.2キロ短縮となる駒ケ嶺・新地間が影響する区間は、12月10日から適用されている。

 仙台支社の10月12日付リリースにも、

営業キロの変更後に運賃が低廉となる区間については、運転再開日より変更後の運賃で
お求めになれます。

と書かれていた。同リリースで運賃が低廉となる区間として挙げられている坂元→日立木をジョルダンの乗換案内で検索してみると、営業キロは従来の20.1キロのままだが、運賃は20キロ以下の320円で、このルールが反映されている。小田栄など不規則な計算ルールが増えて、運賃計算ソフトのプログラムが複雑になってきたようだ。

追記(1月8日):コメントを受けて訂正。また「駒ケ嶺・新地間」に「が影響する区間」を挿入(旧営業キロ駒ケ嶺・新地間の-0.2キロだけを適用するのではない)。

JRと私鉄のフリーきっぷ

JR東海は26日、JR東海&16私鉄☆乗り鉄たびきっぷを発表した。JR東海の在来線と新幹線熱海・米原間及びJR東海エリアの16私鉄(近江鉄道を含む。名鉄近鉄大井川鉄道四日市あすなろう鉄道三岐鉄道三岐線名古屋市営地下鉄は含まない)が乗り放題で、特急料金を払えば、在来線特急と新幹線(ひかり・こだま)にも乗れる。値段は8,900円、7月30日以降の土日及び3連休の2日間有効で、通年発売する。ただし、4月27日〜5月6日、8月11日〜20日と12月28日〜1月6日は使用できない。
またJR東日本・千葉支社は、千葉県内のJR線、小湊鉄道いすみ鉄道銚子電鉄及び一部のバス路線がフリーとなるサンキュー♡パスを発売する。有効期間は9月1日から11月20日の連続する2日間で、値段は3,900円。特急料金を払えば、特急に乗れる。
JRとエリア内の私鉄が乗り放題のフリー切符としては、JR九州旅名人の九州満喫きっぷが3か月以内の任意の3日間有効で10,800円(特急の乗車は乗車券も必要)。JR東日本の関東、南東北と甲信越がフリーエリアの週末パスが土休日の2日間有効で8,730円。かつては、東北地方のJRと10私鉄がフリーの東北ローカル線パスがあったが、2014年秋を最後に発売されていない。千葉県内のフリー切符は、2011年当時「パワフルXスマイルちばフリーパス」があり、フリーエリアは同じ(鹿島線は全線)で1日有効1,800円だった。
どちらもお買い得で、とくに私鉄の乗りつぶし派にとって価値がある。ローカル私鉄が不利にならないように、収入を配分してほしいものだ。

1962年の阪神電鉄旅規

昨日、旅規ポータルの旅規アーカイブスに阪神電気鉄道旅客営業規則(1962年12月1日現行)を掲載した。原典は、阪神社内の業務に使用されていたとおぼしきのもの。表紙には昭和36年4月1日現行とあるが、その後の改定箇所が切り貼りで訂正されており、最終改定の施行日は、尼崎海岸線が廃止された昭和37年12月1日となっている。
全体的に国鉄の旅規に倣って構成され、急行券など阪神に適用のない条項は、東急やかつての営団の旅規と同様欠番となっている。別表5の危険品は国鉄と全く同じで、阪神には必要のない「自動車線区間」が削除されず、記載されている。国鉄との契約条件の比較では、回数券の同時使用が旅客にとって有利。国鉄の4券片までに対し、全券片を同時使用できた。一方団体運賃の割引率は、国鉄よりも低い。
1962年当時阪神は、区間制運賃を採用していた*1。また、路面電車の国道線が廃止される前で、国道線と本線*2とで、環状線を形成していた。これらが旅規でどう扱われていたか、興味深い。
区間制運賃は、区間の分割を表示した路線図が別表1に掲載され、別表2及び4に区間数による普通運賃と回数運賃が記載されている。梅田・元町間は7区間に分割されており、2012年9月18日の記事で紹介した、開業時*3の4区間に比べ細かく設定され、開業時の特定運賃がなくなった。また開業時の運賃は区間数比例だったが、遠距離逓減になっている。
別表1の注にあるように、本線系統と国道線系統*4とは別運賃体系で、両者にまたがって乗車する場合は、一部の特区区間を除きそれぞれの運賃の併算だった。したがって環状線の迂回乗車は認められず、北大阪線の各駅と東神戸駅間のみ、国道線の乗車券で本線野田・西灘間を経由する選択乗車が認められていた。
区間制運賃は普通運賃と回数運賃で、定期運賃は別表3で対キロ区間制で定められていた。左のグラフに示すように遠距離逓減度がきわめて高い。なお、比較対象の点線は、1961年4月6日改定実施の国鉄定期運賃で、2014年7月20日の記事で書いたように、国鉄運賃法の限度額に合わせるため、不規則なカーブとなっている。
昨日は、データルーム本館の更新も行った。最長片道切符のルート変遷 1961-2016では、AsaPi!氏の最長ルート変遷地図に新たに掲載された2016年3月暫定最長ルート並びに1968年5月、1971年8月及び1972年3月の最長ルートにリンクした。また、都道府県境踏破国界を越える鉄道北海道新幹線を追加、Railway News福井鉄道福井駅延伸を記載し、これをRailways of Japanに反映した。

*1:2012年6月5日の記事に書いたように、関西の大手私鉄5社は、1974年7月20日一斉に区間制から対キロ区間制に移行した

*2:当時は本線も「軌道」

*3:開業時は梅田駅の手前の出入橋がターミナル

*4:本線系統は、本線、伝法線(現阪神なんば線)、武庫川線及び北大阪線、国道線系統は国道線及び甲子園線。路面電車の北大阪線は本線系統に含まれていた

特急料金10円と時間制フリーきっぷ

JR北海道は3月26日のダイヤ改正普通列車を削減する宗谷本線で、影響を受ける3町の町民に限って10円の追加料金で特急列車に乗車できる特別措置を検討中とのことである。毎日新聞2月4日付記事

JR北海道 宗谷線3町住民、10円プラスで特急乗車OK
 JR北海道の3月26日のダイヤ改正普通列車が減便される宗谷線旭川稚内)で、JR北が沿線の中川と幌延、豊富3町の住民を対象に、運賃に10円を追加すれば特急列車に乗れる特別措置を検討していることが4日、分かった。国土交通省によると、全国でも珍しい措置という。
 減便はディーゼル車両の老朽化などが理由で、宗谷線では現行58本のうち6本が廃止、2本で運転区間が短縮される。通院や通学、買い物などで中川町からは名寄市へ、幌延、豊富両町からは稚内市へ利用する住民が多いが、減便で区間によっては日中最大約7時間、普通列車が運転されない時間帯ができる。
 JR北から提案を受けた3町によると、特別措置では、中川町民は名寄−天塩中川幌延町民は幌延稚内豊富町民は豊富−稚内で、運賃に10円を追加して特別乗車票を購入すれば特急に乗れるようにする。対象区間の自由席特急料金は620〜1130円。宗谷線には1日往復6本の特急が運転されており、どの列車を対象とするかは各町とJR北が協議している。
 JR北広報部は「特別乗車票の販売を各町に委託する契約を結ぶことを提案している」としており、各町は町民への販売方法を検討している。【小川祐希】

特定町民だけが対象というのが気になる。鉄道事業法16条5項は、運賃・料金が「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき」国土交通大臣鉄道事業者に対し変更命令をだすことができると規定している。特別措置は「不当に」特定の旅客だけを優遇しているとはいえないのか。特別乗車票の販売を各町に委託するというのがその回避策なのか。
もう一つ東京メトロから2月4日付で興味深いリリースが出た。3月26日から「東京メトロ一日乗車券」(600円)を「東京メトロ24時間券」に変更し、使用開始から24時間有効にする(リリース)。また、東京メトロ都営地下鉄共同の「Tokyo Subway Ticket」は1-Day(800円)、2-Day(1,200円)、3-Day(1,500円)がそれぞれ24-hour、48-hour、72-hour Ticketに変更され、時間制となる(リリース)。東京メトロ都営地下鉄とのサービス一体化の取組みとして実施するとのことであるが、東京メトロ都営地下鉄共通一日乗車券(1,000円)は時間制への変更対象になっていない。また東京都交通局単独の「都営まるごときっぷ」などの一日乗車券も従来のままである。
時間制のフリー切符は、日本では沖縄都市モノレールが導入しているだけだが、海外では一般的である(2014年10月16日記事)。外国人旅行者が対象の「Tokyo Subway Ticket」を時間制へ変更するのに合わせて、メトロの一日乗車券も変更したのだろう。
「Tokyo Subway Ticket」を購入できるのは外国人旅行者だけと思っていたら、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬および山梨の1都7県)以外からの旅行者も発売対象に含まれている。しかし、日本人旅行者向けの発売個所は米子鬼太郎空港(航空機利用者のみ)と地方旅行代理店(東京向けの旅行商品購入者のみ)だけで、ほとんどの旅行者は利用できない。メトロ・都営の共通一日乗車券よりも安く、時間制で使い勝手が良い「Tokyo Subway Ticket 24-hour Ticket」を米子からの航空機利用者だけが購入できるというのは、何か理由があるのだろうか。
地方空港利用者に対する首都圏鉄道運賃の優遇については、2013年12月3日記事京急の「羽得2枚きっぷ」の例を取り上げた。米子空港発売の「Tokyo Subway Ticket」は、購入者がより限定されるという意味で、「羽得2枚きっぷ」やJR北海道の特別乗車票よりも差別的取扱の不当性が低いといえるのか。あるいは、トクトクきっぷはもともと、鉄道事業法16条5項の対象ではないのか。

北海道新幹線の特企券

昨5日JR各社から北海道新幹線の開業に伴う各種特企券の取扱いが発表された(JR東日本のリリース)。
青春18きっぷ」などで蟹田木古内間の特急列車の自由席に乗車できる特例が廃止されるが、2,300円の「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を購入すると北海道新幹線奥津軽いまべつ木古内間(普通車の空席)と接続する道南いさりび鉄道木古内五稜郭間(内方乗車は不可)を片道1回利用できるようになる。また、「北海道&東日本パス」は10,290円から10,850円に値上げされるが、新青森新函館北斗駅間内の相互発着については、新幹線の特急券新青森新函館北斗駅間特定特急料金は3,930円)を購入することにより、普通車の空席を利用できるようになる*1奥津軽いまべつ木古内で乗り換えずにすむ「北海道&東日本パス」の方が使い勝手が良いが、「青春18きっぷオプション券」の方が安く、道南いさりび鉄道にも乗車できるので、一長一短か。
「フルムーン夫婦グリーンパス」や「ジャパン・レール・パス」などは北海道新幹線を利用できるが、JR北海道の「北海道フリーパス」などのフリーきっぷは、北海道新幹線をフリーエリアから外す。また道東・道南方面へのRきっぷ・Sきっぷ(特急料金込みの往復割引切符)は、運賃のみの割引に変更され、往復割引乗車券と併用する割引特急券を別途発売する。

追記(1月7日):コメントにあったように、JR北海道は在来線の特急指定席料金の季節格差を撤廃し、年間通して自由席特急料金の520円増しに統一する。また、快速エアポートの指定席料金も310円から520円に値上げされる(JR北海道リリース)。
JR北海道リリースの「レール&レンタカーきっぷ」の説明に

ご利用行程の途中に、経営移管される木古内五稜郭間(道南いさりび鉄道線)を含む場合、当該区間には割引を適用しません。前後のJR線についてのみ割引を適用して発売します。その際、前後のJR線の営業キロは通算せず、前後のJR線の営業キロごとに割引を適用します。

と書かれている。道南いさりび鉄道を介した通過連絡運輸は実施されないようだ。

*1:JR北海道のリリースにしか記載されていない