阿佐海岸鉄道DMV営業運行開始

阿佐海岸鉄道阿佐東線DMV営業運行が本日午後始まった。徳島新聞の記事。

海陽町四方原の阿波海南文化村で発進式があり、午後0時36分に阿佐海岸鉄道の三浦茂貴社長(海洋町長)が合図の笛を鳴らすと、乗客を乗せたバスモードの第1便がゆっくりと出発した。

阿佐海岸鉄道のページもプロ仕様にリニューアルされた。当面は予約が推奨され、「乗車予約」をクリックすると、発車オーライネットに飛ぶ。

気になるのは、これまで阿佐海岸鉄道に乗車できたJR四国のとくとくきっぷ。四国みぎした55フリーきっぷは、6月30日から発売を停止しており、「今後の再販時期につきましては詳細が分かり次第当サイトにてお知らせいたします」。バースデイきっぷも「有効期間開始日が2021年10月1日となるものから、阿佐海岸鉄道線はご利用になれません」。

 

全国の鉄軌道路線リスト更新

第5回全国の鉄道路線五番勝負は、12月3日(金)21時から72時間開催します。

それに先立ち、全国の鉄軌道路線リストを12月3日現在に更新した。

東京メトロ13号線副都心線小竹向原~池袋3.0キロを追加した。令和3年(2021年)度版鉄道要覧では、新線開業等はないのに東京メトロ営業キロが3.0キロ伸び、195.0キロになっている。12号線副都心線小竹向原・池袋間が有楽町線と別路線として計上されたことによるものとわかった*1。備考欄に

小竹向原,池袋間は8号線の工事方法一部変更認可による

と記載されている。従来(令和元年度版まで)は

小竹向原,渋谷間のキロ程は11.9粁
小竹向原,池袋間3.0粁は有楽町線の線路を使用

だった。

帝都高速度交通営団史」によると、同区間有楽町線複々線区間とされた経緯は次のとおり(p195-196)。

 有楽町線営団成増・池袋間の建設は、昭和46年7月に建設大臣の工事施行認可を受け、昭和47年1月に氷川台以西の公示に着手した。その後、昭和47年3月の都市交通審議会答申第15号において第13号線(志木・池袋・渋谷方面)が追加され、このうち小竹向原・池袋間は有楽町線13号線が並行することとなった。
 13号線の供用時期は、有楽町線よりかなり後になることが予想されたが、建設コストの縮減、沿線住民への負担の軽減、道路占用手続き等の面から、両線を一体構造で建設したほうが有利との判断により、複々線構造を計画した。複々線トンネル部の構造は、用地を節約するために、並列4線ではなく2線ずつの上下段型とした。
 こうして昭和52年9月、建設大臣から小竹向原・池袋間を複々線とする工事変更の認可を受け、同区間の建設工事を開始した。有楽町線の上段部は、昭和58年6月に開業した。下段部も、昭和60年8月の池袋駅新線池袋駅)を最後にすべての地下鉄構築を完成した。
 既に記したように、小竹向原・池袋間の下段トンネルは13号線の一部であった。しかし、有楽町線池袋以西(営団成増・池袋間)の混雑を緩和させるため、この区間を一足早く供用することにした。
(中略)
 こうして平成6年12月7日、下段トンネルの供用を開始し、有楽町線小竹向原・池袋間は複々線営業となった。これに伴い、池袋駅の名称を新線池袋とした。また、同日、西武有楽町線練馬・新桜台間が開業し、西武有楽町線との相互直通区間を練馬まで延長した。

区間は、2008年6月14日の池袋・渋谷間の開業とともに副都心線に組み込まれたが、認可上はあいかわらず有楽町線複々線という扱いだった。その後「工事方法の変更認可」により、名実ともに副都心線区間になったらしい。

リストに注記している運休区間も、12月3日現在にアップデートした*2。9月18日叡山電鉄鞍馬線市原~鞍馬間が437日ぶりに運転再開したほか、7月、8月の豪雨で運休となっていた小湊鉄道線里見~上総中野間、久大本線日田~豊後森間などが復旧した。11月15日復旧予定の飯田線伊那新町~辰野間及び28日復旧予定のくま川鉄道肥後西村~湯前間も運休区間から外した。一方、9月の豪雨で日南線青島~志布志間が運休となっている。

阿佐海岸鉄道のバス代行輸送は継続している。11月4日DMV技術検討会が開催され、安全性に問題がないことが確認されたとしているが、2020年中とされていた開業時期は明記されていない。

追記(11月11日):コメント頂いた阿佐海岸鉄道の12月25日DMV開業は、阿佐鉄DMV営業運行開始日決定!!で通知されている。トップページからのリンクはない。11月10日の第9回DMV導入協議会で決定し、「運行会直後の繁忙期においては、一部を除き乗車予約制とする予定」とのこと。

追記2(11月20日):コメントで指摘を受けた誤記を訂正。

*1:令和2年(2020年)度版から変更になっていた

*2:鉄道長期不通路線マップを参照している

阿佐海岸鉄道DMV開業遅延

阿佐海岸鉄道は、1月7日付で、DMV運行開始に向けたスケジュールの変更について発表した(リリース)。「2020年度内の運行開始を目標に準備を進めてき」たが、「2021年東京オリパラまでに、安全に運行開始が出来るように準備を進めていく」とのことである。2020年12月18日国交省が開催した「第2回技術評価検討会」で性能試験項目が確定し、「更なる安全対策」を実施することになり、全体スケジュールを見直したようだ。

12月18日の「第2回技術評価検討会」については、国土交通省のウェブに開催通知があるが、結果は示されていない。マイナビニュースの1月4日付鉄道ニュース週報によると、

阿佐海岸鉄道が提示した性能試験については了承され、さらに委員から、「GPSを使ったシステムは現地の状況に即してデータ取得を行うべき」「DMV車両の試験結果については(略)現地の気象条件を考慮したうえで判断すること」と意見が付いた。 

とのことである。

阿佐海岸鉄道は、1月15日付でDMV車両「性能試験」の公開についてもリリースした。これによると、1月20日から28日まで走行安全性、乗り心地の試験、1月31日から2月5日まで減速性能、加速性能の試験を行う。技術評価検討会の意見に沿ったものだろう。

 

牟岐線阿波海南・海部間廃止など

一昨日公開した鉄道管理局所管区域対比(1950vs1949)のために過去70年の鉄道路線の開廃を調べていて、最近の状況のチェックを怠っていた。JR四国9月29日リリースによると、JR四国牟岐線阿波海南・海部間が10月末に前倒しで廃止された。阿佐海岸鉄道DMV化に伴うもの(8月13日の記事参照)。

阿佐海岸鉄道10月26日リリースによると、牟岐・海部間のJR四国代行バスは、11月30日まで運転を継続する。12月1日以降阿佐海岸鉄道は海部・甲浦間の列車運行を取りやめ、阿波海南・甲浦間をバス代行する(JRの代行バス牟岐・阿波海南間に短縮)。阿波海南・海部間の代行バスの運賃は12月1日前後とも「無料」と書かれているが、阿波海南・海部の1駅間だけ乗車しても無料なのだろうか。浅川以遠から阿波海南の運賃で海部まで、海部から宍喰以遠の運賃で阿波海南から乗車できるということならわかるが。

阿佐海岸鉄道DMVは2020年度中運行開始とされているが、開業日はまだ示されていない。レール走行区間は法規的には案内軌条式鉄道になるのだろう。徳島県第6回阿佐東線DMV導入協議会のページの資料3に、ダイヤと運賃の案が示されている。鉄道区間の運賃は、海部・甲浦間が現行の280円が400円、阿波海南・甲浦間も現行のJR・阿佐連絡運賃450円が500円に値上げとなる。道路走行部の甲浦・室戸岬間も、現行のバス運賃1,310円から1,800円に大幅値上げ。レールと道路がまたがる場合も、すべて現行運賃より高い。JR四国フリー切符の利用や回数券の発売については調整中とのこと。

海部駅は全国のJR駅五番勝負の対象外になる。12月4日開始の第12回全国のJR駅五番勝負に先立って全国のJR駅リストを更新。また全国の鉄軌道路線リストに阿波海南・海部間の移管とともに10月1日休止となった秩父鉄道三ヶ尻線(貨物線、12月末廃止予定)を反映した。

ほかにもデータルームでフォローしている件名を見逃していた。11月12日に開業した大井川鐡道大井川本線の門出駅はニュースで報道されていたが、 五和駅から合格駅への改称も同時に行なわれていた。ともに突っ込みがいがある駅名である。また、10月1日阪堺電気軌道伊予鉄道が運賃を改定した。「駅名改称の研究」と「鉄道事業者の運賃比較」*1は、追って更新する。

 

 

*1:阪堺区間制運賃で運賃ランキングの対象外

牟岐線阿波海南・海部間の阿佐海岸鉄道移管

JR四国11日付リリース四国運輸局に対し牟岐線阿波海南・海部間の鉄道事業廃止を届け出たと発表した。阿佐海岸鉄道阿佐東線へのDMV導入に伴い、同区間阿佐海岸鉄道に移管するもの。四国運輸局からも廃止申請に係るヒアリングの公示があった。阿佐海岸鉄道も同日阿佐東線延長の鉄道事業許可を申請したとされているが、同社のウェブサイトにリリースは掲載されていない。

JR四国はこれに先立ち、7月18日から工事のため牟岐・海部間を運休、代行バスが運転されている*1DMVについては2012年9月19日の記事以降フォロー、輸送密度が低いローカル線の生き残り手段として期待してきたが、いよいよ現実のものとなりつつある。

*1:全国の鉄軌道路線リストRailways of Japanの路線運休情報は、第2回全国の鉄道路線五番勝負の開催予告時にまとめてアップデートする予定

阿佐海岸鉄道にDMV

JR北海道が実用化を断念したDMV阿佐海岸鉄道で日の目を見るかもしれない。NHKのサイトにDMV 徳島県が全国初の営業運転の方針という記事をみつけた。おそらくNHKのローカルニュースで報じられたのだと思うが、徳島県や地元紙徳島新聞のサイトには、リリースや記事が掲載されていない。削除されないうちに、全文を記録しておく。

南海トラフの巨大地震への対策として、徳島県は、高知県との間を結ぶ沿岸部の鉄道路線に、線路と道路の両方を走ることができる車両、DMVを導入して運行する方針を決めました。国土交通省によりますと、DMVの営業運転の方針を決めたのは全国で初めてだということです。
DMVは、金属の車輪とゴムのタイヤを備え、鉄道と道路の両方を走ることができます。
徳島県は平成24年、県などが出資する第三セクターが運行する沿岸部の阿佐東線で試験走行するなど、導入を検討してきました。
徳島県は、国土交通省の委員会がDMVの安全性に問題はないとする結論を去年10月に出したことを受け、検討を進めた結果、南海トラフの巨大地震津波で線路が被災した場合でも、道路上を運行できる可能性があり、復旧に有効だと判断し、高知県までを結ぶ阿佐東線の8.5キロの全線に導入して運行する方針を決めました。
県の新年度の当初予算に、線路と道路を乗り入れできる設備やDMVの利用客が乗り降りできる駅のホームなどの設計費として、1300万円余りを盛り込む方針です。
国土交通省によりますと、DMVの導入はこれまで各地で検討されてきましたが、営業運転に使用する方針を決めたのは全国で初めてだということです。
徳島県は今後、国への事業申請に向けて、車両の導入時期などについて検討することにしています。

DMVの安全性に関する国土交通省の委員会の結論は、DMVに関する技術評価委員会中間まとめにある。DMVのみの専用線区による単車運行を前提として、「現行の軌道回路による位置検知に依存しない本運転保安システムを適用することについて、特に問題ない」と 結論付けたもの。この保安システムは、JR北海道が開発した、「車両側の車軸パルス距離積算により自車位置を検知するとともに赤外線通信を位置補正に利用し、無線データ通信による制御を行う」ものだが、「本補正技術に変えて、GPSと慣性センサーを組み合わせた技術を採用すれば、十分な位置検知機能の達成が見込まれ、有用な方法の一つとなり得る」としている。
追記(2月8日):徳島県と同様にDMVの実証実験を行っていた富士市は導入を「一時断念」する。昨年12月8日の静岡新聞の記事DMV「一時断念」 富士市、公共バス整備へ

 富士市は7日までに、改造したマイクロバスで線路と道路の両方を乗り入れられる新交通システムDMVデュアル・モード・ビークル)」の導入を一時断念する方針を固めた。市は代替案として公共バスの整備を進める意向。
 構想から10年を迎えたが、DMVの開発元のJR北海道が管内で相次いだ列車事故の対応を優先して構想の具現化が進まず、当面は困難な情勢となっていると判断したもようだ。関係機関による検討会はここ数年、開かれていなかった。
 DMV構想は2004年、導入に向けて検討を開始。当初案は、JR新富士駅と富士駅の間の工場引き込み線にDMVを走らせ、同駅からは一般道路に移行して主要商店街や市役所を通過し岳南電車ジヤトコ前駅に接続。終点の岳南江尾駅から道路を走ってJR東田子の浦駅につながるルートを想定していた。
 最大約70億円(概算)の初期投資、年間1億7千万円前後の経常負担もネックとされる。

JR北海道廃線候補リスト

北海道新聞の記事JR廃線拡大の可能性 第三者委、7路線8区間を例示によると、JR北海道再生推進会議*1は、6月26日にまとめた提言書で、路線廃止を含めた「聖域ない検討」を求め、「利用が少ない区間」として輸送密度が500人/キロ以下の次の区間を例示したという。

路線区間営業キロ輸送密度
1札沼線北海道医療大学新十津川47.681
2石勝線新夕張−夕張16.1117
3留萌線深川−増毛66.8142
4根室線滝川−新得136.3277
5根室線釧路−根室135.4298
6日高線苫小牧−様似146.5405
7釧網線東釧路−網走166.2436
8宗谷線名寄−稚内183.2466
JR北海道は、閑散線区のレールを維持するためにDMVを開発し、夕張市は石勝線夕張支線への導入を期待していたが、記事では言及されていない。

 2013年2月8日の記事に書いたように、国土交通省DMVの導入・普及を図ることを目的として、検討会を設置した。国土交通省のサイトには、同年7月6日の第3回検討会までの議事要旨と配布資料が掲載されている。導入に積極的な意見が多く、平成25(2013)年度末の「最終とりまとめ」までに対応の方向性を目指すとされていた。しかし、その後検討会及び最終とりまとめについての記載はない。

 潮目が変わったのは、特急列車の発煙・出火事故、貨物列車の脱線事故、運転士によるATSの破壊などが多発し、JR北海道の企業体質が問題になった2013年の秋である。DMVの開発はこれらの事故や不祥事とは関係ないが、鉄道の安全対策を優先し、実用化検討は明らかに後退した。江差線木古内江差間は導入のチャンスだったが、2014年5月の廃止に間に合わなかった。

 2014年10月、国土交通省有識者による技術評価委員会を設置、JR北海道がこれまで行ってきた技術開発の状況について、技術開発の現状と課題及び走行試験の概要等を検討している。おりしも6月26日、技術評価委員会が開催されたが、その報道発表資料は、概要として

(1)JR北海道において開発された運転保安システムについて、これまでの開発経過の説明に基づき、運転保安システムの安全性ついて、意見交換が行われた。

(2)次回も引き続き、運転保安システムの安全性等について評価を行うこととした。

と通り一遍の記載をするだけである。時計の針を2年前に戻した議論を繰り返しているようだ。このままDMVが日の目を見ずに、7路線8区間が廃止されてしまう事態は見たくない。

*1:一連の不祥事に対する国土交通省の改善命令を受けて設置された第三者諮問機関で、コンプライアンスや企業の組織経営の面からも外部の視点で助言を行うとされている