大船渡線BRT3月2日運行

JR東日本盛岡支社の1月31日付プレスリリースによると、大船渡線のBRTが3月2日から運行される。
BRTの専用路線は、大船渡・盛間の1.9キロのみ。気仙沼陸前高田間は鉄道線路と離れた海岸沿いの国道を運行する(長部駅新設)。陸前高田市内は内陸を走り、陸前高田駅と脇ノ沢駅が移転、その間に高田病院駅が新設される。陸前高田市内と大船渡駅間は鉄道線路に沿ったルートと国道45号線を短絡する二つのルートができる。
そのため気仙沼線のBRTが1系統であるのに対し、大船渡線は次の6系統からなる(カッコ内の数字は往復の本数)。

このうち、気仙沼上鹿折間はミヤコーバスの気仙沼駅前・上鹿折駅前間をBRT区間として運行するもの。他の系統の運行は岩手県交通に委託する。
BRTの運賃は、気仙沼線の取扱を踏襲した。BRTのみの乗車は鉄道と同額(系統間及び気仙沼線BRTとの乗継は通算)。鉄道とBRTとの乗継はそれぞれの運賃を合算するが、合算額から100円割引となる区間が設定される。

続・気仙沼線BRT化に伴う旅規改正

気仙沼線BRT化に伴う旅客営業の取扱に関してウェブで入手できる情報は、JR東日本仙台支社・盛岡支社連名の11月19日付プレスリリースしかない。12月21日の記事で書いたように、JR九州12月17日付旅規改正公告によると、第17条として「気仙沼線柳津・気仙沼間の特殊取扱」が新設されたが「別に定める」とあるだけだ*1
漏れ聞こえてきたところによると、「別」とは旅客営業取扱基準規程ではなく、BRTによる仮復旧の取扱に関する単行の通達のようである。その通達で、
・BRT線内相互発着となる乗車券類は発売しない
・旅客がBRT線を通過し、前後の鉄道線にまたがって乗車する場合は、その前後の鉄道線区間営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロ)を通算する
・「青春18きっぷ」等の特別企画乗車券でBRT線に乗車できる
・12月21日以前に発売した乗車券については、過渡的取扱として1月31日までBRT線に乗車できる
などが規定されたようだ。
このような旅客との契約条項を約款に記載しないのは問題である。とくに、12月21日の記事に対するコメントにあったように「BRT線内相互発着となる乗車券類は発売しない」は、旅規第16条の5を

常磐線北千住・綾瀬間相互発着又は気仙沼線柳津・気仙沼間相互発着となる旅客に対しては、乗車券類の発売を行わないものとする。

と改正して、周知すべきだろう。また、通過連絡運輸については、2002年10月1日のJR四国のバス約款分離まで存在していた、第68条第1項第2号を復活し、

(2) 自動車BRT線が鉄道の中間に介在する場合、これを通じて乗車券を発売するときは、前後の鉄道区間営業キロを通算する。

とすべきである。

*1:本日現在、ウェブに旅規を掲載しているJR四国を除く5社のうち、この改正を反映しているのはJR北海道だけで、他社はいずれも3月17日現行のままである

気仙沼線BRT化に伴う旅規改正

12月22日からの気仙沼線BRT化に伴う旅規改正公告がJR九州のサイトに掲載された。これに伴い、旅規ポータルのJR東日本旅規改訂履歴(条項順)・(日付順)を更新した。
気仙沼線BRT化により、第17条として以下の条項が新設された。

気仙沼線柳津・気仙沼間の特殊取扱)
第17条 気仙沼線柳津・気仙沼間の一部又は全部の区間を乗車する旅客の取扱い等については、別に定める。

「別に定める」とは、基準規程などをさしているのだろうが、中央書院の倒産と日本鉄道図書の廃業により冊子版旅規の発売がなくなってしまい、閲覧することができない。
はっきりしたことは、BRT転換する気仙沼線柳津・気仙沼間が鉄道路線として存続していることである。11月23日の記事で、代行バスから旅客会社直営バスへの移行により、この区間は最長片道切符のルートから外れると書いたが、鉄道路線のままなら、少なくとも「不通承知」で乗車券が発売されるだろう。また、「青春18きっぷ」や「東北ローカル線パス」によるBRTへの乗車については発表がないが、21日まではOKで、22日以降はダメということにはならないと思われる。
一方、2002年10月1日のJR四国のバス約款分離まで存在していた、第68条第1項第2号

(2) 自動車線が鉄道の中間に介在する場合、これを通じて乗車券を発売するときは、前後の鉄道区間営業キロを通算する。

が復活していないので、バスを介した前後の鉄道運賃通算の取扱はないようだ。
旅規第17条は2001年7月1日以来の復活である。廃止されるまで第17条は、「自動車線駅と鉄道駅との特殊取扱」という条項だった。国鉄時代から航路と自動車線の旅客運送約款は鉄道と共通で旅規に規定されていたから、鉄道と航路・自動車線にまたがる1枚の乗車船券が発売された。鉄道とバスとにまたがる乗車券を発売する際、鉄道とバスの駅名が異なる接続駅を同一駅として取扱うことを規定していたのが第17条である。2001年7月1廃止直前の第17条は、

(自動車線駅と鉄道駅との特殊取扱)
第17条 次に掲げる自動車線の駅は、かつこ内の鉄道駅と同一の駅とみなして旅客の取扱をする。
 直方本線 筑前土井(香椎線土井)・箱崎駅前(鹿児島本線箱崎

で、JR九州直営バスの子会社移管によって削除された。

気仙沼線BRTの正式運行

JR東日本仙台支社・盛岡支社連名の11月19日付プレスリリースによると、

2012年12月22日(土)より当社が事業者となってBRTの運行を開始します。なお、BRTの運行に関する業務は、(株)ミヤコーバスに委託します。

とのことである。
8月21日の記事で書いたように、気仙沼線は、8月19日までミヤコーバスによる振替輸送、8月20日から当分の間代行バス実施だった。「12月22日より当社が事業者となって」とあるが、代行バスもJRの運行で、ミヤコーバスに委託していたはずである。
BRTの正式運行によって大きく変わるのは、運賃体系である。BRTと鉄道を乗り継ぐ場合の運賃は、両者の運賃の合算額となる。ただし、図の区間については、合算額から100円(小児50円)を差し引くという。定期運賃は、図の区間を連続して利用する場合は、従前の運賃で1枚の定期券を発売するが、それ以外の区間は、BRTと鉄道の定期券が別個に発売される。
代行バスは、鉄道の代行であるからJR線の乗車券で乗車できた。9月19日の記事代行バスの乗車報告を書いたが、そのとき使用したのは東北ローカル線パスである。12月22日以降青春18きっぷや東北ローカル線パスでBRTに乗れるのだろうか。
日経11月19日の記事によると、大船渡線気仙沼・盛間でも、BRTによる仮復旧のための専用道工事に着手したとのことである。JR東日本は、BRTはあくまで仮復旧の手段と地元に説明してきた。仮復旧のBRTの運賃を鉄道と通算しないとはこれまで言っておらず、鉄道代行バスに比べて乗客が不利になるというは納得できない。
いずれにせよBRTの正式運行で、気仙沼線がまた最長片道切符ルートから外れることになる。

DMV vs BRT

北海道の経済誌財界さっぽろ」10月号の「JR北海道DMVはどうなった」という記事を知人から送ってもらった。19日の記事で書いたことが取り上げられているので、紹介する。
特急炎上事故後の実用化計画の中断については、

 JR北海道広報は「計画再開のめどはたっていません」と話す。理由は事故再発防止のための「安全基本計画」策定が遅れているためだ。
 今年3月にDMVを実用化する予定だったが、小池明夫社長は1年以上送れることを明言している。

江差線DMV化については、「ある運輸関係者」の発言として

「(前略)JRは廃止路線地域にバスなどの代替交通手段の確保に協力すると沿線自治体に伝えているが、なぜDMVの導入は検討されなかったのか疑問に思う。14年まで猶予があるなら、十分に実用化できる。せっかく世界初の技術なのに、宝の持ち腐れにはならないか」

また、道外からのDMVの導入については、阿佐海岸鉄道津軽鉄道の例を紹介し、

 ただ、これら道外で実用化される時期はまだまだ不透明だ。DMVは国の指導によりJR北海道がビジネスモデルを確立してから、同社以外の鉄道に導入される。道内で実用化されない限り、道外でDMVが運行することはできない。そのため、導入を計画している自治体や鉄道会社は、JR北海道に対し早期実用化を要望している。

と書かれているが、JR北海道の実用化先行という国の指導は、本当だろうか。岳南鉄道は、DMVの実証実験走行をした路線だが、3月16日限りでJR貨物との連絡運輸が休止となり、貨物列車の運行を終了した。収益源だった貨物輸送がなくなり、廃止の危機に陥っているが、旅客輸送だけなら、DMV化はしやすくなる。JR北海道の実用化をまたずに、先行すべきではないか。
近鉄も内部線・八王子線を廃止、BRTに転換する方針を打ち出した。762ミリのナローゲージの軌道敷では、スピードはますます出ない。ローカル線は自動車に対抗するためにスピード(表定速度)が重要との指摘もある(「のんびりゆったり」はローカル鉄道を潰す)。
繰り返しになるが、線路が残っている区間はレール上を、流された区間は一般道路を運転できるDMVは、気仙沼線等の復旧にもっとも早く対応できる方法だと思う。JR東日本はBRT化を地元に提案する前に、DMVも検討したのだろうか。もともと並行する国道の渋滞は少ないのだから、仮復旧としているBRT化のために、レールを外すのはやめてほしい。
JR東日本近鉄のBRT化をどう思うか、柿沼会長に聞いてみたい。どこかの新聞が取材してくれないだろうか。

気仙沼線代行バス

先日気仙沼線代行バスに乗車した。最知・陸前階上間はBRTの先行開業だが、単線の軌道敷を走行するスピードは、国道走行時と変わらず、Rapid Transitというのは誇大広告。一般道路の信号がない代わりに、所々に退避場が設置され、すれ違いの待ち合わせをする。軌道の被災状況を見ると、JR東日本が言っている60%を専用道にするのは、かなり時間がかかりそう。それに残っているレールを取り外して、舗装するというのは、なんとももったいない。
以前、JR北海道柿沼副社長(現会長)の講演を聞いたことがある。JR北海道のほとんどの路線は赤字だが、簡単に廃止できない。鉄道を低コストで運営できないかと考えたのが、DMVである。バスのコストは、ディーゼルカーの10分の1。DMV化した路線には一般の車両は走らせないので、GPSの利用等により信号系を簡素化し、さらにコスト削減できる(そのためには規制緩和が必要)、という説明だった。
質疑応答の時間に「DMVの専用路線にするなら、レールを残してDMVにしなくても、軌道敷に普通のバスを運行したほうがコストを削減できるだろう。バス運賃を鉄道なみに維持すれば地元も理解するのでは」と意地悪な質問をしたところ、次のような答えだった。

  • DMVは、レールというガイドがあるため、狭い軌道敷で高速運行ができる。バスをDMVなみの速度で走らせるためには、軌道敷の道路幅ではたりない。
  • 鉄道の鉄橋を自動車専用道路橋に付け替えるのは多額の費用がかかる。

柿沼氏は、鉄道の省スペース性を強調されていた。実際、気仙沼・柳津間の代行バスの所要時間は2時間強で、震災前の鉄道の1時間20分程度の1.7倍。専用道路化しても、一般道路並みのスピードしか出せないから、これが大きく短縮されることはない。津波で線路が流された山田線、大船渡線気仙沼線の復旧は、DMV実用化のチャンスではと思うのだが、DMVの話はまったく聞こえてこない。
2011年5月の石勝線の特急脱線炎上事故対応のため、JR北海道DMV実用化は延期になっているようだ。北海道新幹線開業時に、JRから経営分離される江差線木古内以遠を廃止するという話が出てきたのもそのためか。こういう路線を廃止せずに維持するためのDMVだったはず。自社の路線をDMVで救えないのなら、気仙沼線等の救済は無理だろう。
なお、8月21日の記事で、気仙沼線の不通区間について、

19日まで「定期乗車券及び普通回数乗車券に限り、ミヤコーバスによる振替輸送」をしていたということは、不通区間の定期券と回数券は事故後も発行し続けていたのだろうか。

と書いた。大船渡線気仙沼・盛間は現在も同様な振替輸送を行っているので、気仙沼駅で尋ねてみた。その答えは、「定期券と回数券は発売しています」とのことだった。本来は「事故発生前に購入した乗車券類」に適用する振替輸送について、旅客に有利な対応がとられていることになる。

気仙沼線、バス高速輸送システムで仮復旧

各紙が報道しているが、引用は毎日新聞の記事

東日本大震災気仙沼線の路線、BRT正式提案 沿線自治体にJR東 /宮城
 東日本大震災で一部区間が不通になったJR気仙沼線を巡り、JR東日本は27日、仙台市での関係機関会議で、軌道を舗装してバス専用道路に改める「バス高速輸送システム(BRT)」で仮復旧させる方針を沿線自治体へ正式提案した。
 BRTの検討路線は柳津−気仙沼間55・3キロ。運賃は震災前の鉄道と同レベルとする一方、駅数を既設よりも増やす考えも示した。
 出席した国土交通省の担当者によると、復旧費は鉄道では数百億円かかるとみられるが、BRTなら数十億円程度で済むという。JR東経営企画部の大口豊次長は記者団に「地域の復興段階に合わせた柔軟な対応を行うため、BRTによる仮復旧を提案した」と述べた。一方、自治体側は、来年2月の次回会合まで提案を研究する方針。

DMVの開発リーダー、JR北海道の柿沼副社長の講演を聞いたことがある。「軌道敷を専用道路にしてバスを運行するほうがコストが安いと思うが、なぜDMVを開発するのか」と質問したところ、次のような答えだった。

  • DMVは、レールというガイドがあるため、狭い軌道敷で高速運行ができる。一般のバスをDMVなみの速度で走らせるためには、軌道敷の道路幅ではたりない。
  • 鉄道の鉄橋を自動車専用道路橋に付け替えるのは多額の費用がかかる。

日本におけるBRTは、廃止された鹿島鉄道の軌道敷が「かしてつバス専用道」として整備され、茨城空港連絡バスなどが運行されている例がある。軌道敷の専用道路を走るバスは、どの程度「高速」なのだろう。気仙沼線のBRT仮復旧区間はトンネルが多いが、長大鉄橋はない*1ので、専用道路化にむいているのだろうか。
もう一つ記事の「運賃は震災前の鉄道と同レベルとする」という箇所にも興味がある。運行はJR東日本の直営で、鉄道路線とのキロを通算することになるのだろうか。

*1:北上川鉄橋は、鉄道が復旧している御岳堂・柳津間にある